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桑原昭二監督 インタビュー
(略)  ・・・桑原昭二監督  ・・・e-Spirit

ブラウンはもう20年近くインタビュー形式のCMを展開されて非常に認知度が高いと思いますが、最近手掛けていらっしゃるカビキラー、一般生活者を起用したCMを展開されて反響はいかがですか?

カビキラーは2年前ぐらいかな。やっぱりブラウンをやっているからということで頼まれて。ジョンソンという会社はアメリカの会社だけど、テスティモニアル(実証広告)ってやったことなかったらしいんです。

テスティモニアル自体、あんまり信用していなかったようで。ところがカビキラーがジョンソン共々、ライバル会社の某商品があって、そちらはタレントを起用してガンガンCMをやるから、売れ行きが全然違うんですよ。他にも値段も高いとかありますが。

それでシェアが問題にならないぐらいひどいからと言うことで、ついに最後の手段として一回テスティモニアルやってみるかって。そうしたら、あっという間オンエアしてから1〜2週間してカビキラーと某商品が逆転しちゃったんです。

一般の方を起用した実証広告は万能な手法ということですかね?

テスティモニアルは、結果が目の前で、撮影中に見れる商品であれば、すごくやりやすいっていうのはあるんですよ。ブラウンやカビキラーもみんなその瞬間が見えるでしょ?「ヒゲが剃れてる」、「カビが落ちる」っていう。テスティモニアルって、そういう商品だとやりやすいんだよね。

あとは商品がちゃんと良ければ、テスティモニアルは絶対成功するんですよ。今まで何年も、どんなカビ取り剤を使っても落ちなかったって人はね、これだって落ちないと多分思っているわけですよ。 それをやった瞬間に落ちたと。そうすると、その驚きたるやすごいでしょ。
その一瞬の表情を撮りたいんですよ。

実証広告に関して、桑原さんが日頃思うことや代理店・クライアントに対して要望などありますか?

ブラウンもそうだけど、結局、どれだけ本物をとらえてやってもね、やらせじゃないかって言われたりするわけ。それは一つの理由として、クライアントがいい答えを言った人ばっかりを選ぶからね。商品ほめまくってる人とか。当然、クライアントサイドとしては、そういう人を選ぶじゃないですか。いいのが1本あればいいって言うんだけど、そんなんじゃダメだって僕は思ってる。

僕の考え方は、とにかくいろんな人がいっぱい出てこないと面白くない。10人がいて10人が同じ事を言ってても意味がないけど、みんな個性があるわけでしょ? 10人、それぞれ違った答えのほうが面白いじゃん、見てる我々も。僕ね、全てみんなすごいコピーライターだと思うんですよ。クライアントも例えば、「これがいい、これがいい、これがいい」って言われるよりも、「これはあーだ、これはこーだ」って違った表現をされたほうが商品を多角的に褒めているわけだし、面白いよ、そのほうが。だから、10人ぐらいオンエアした方がいいっていうのは、違った答えが出て、複合的にみんなが同じ商品の同じレイアウトを占めるってところがあると思う。

100%思ってる人と、ちょっとネガティブに思ってる人を混ぜていったらすごいリアリティがあると思うんだよね。だから、間に入ってる代理店がね、作戦としてこういうのも隠し味的な、ちょっと否定的だけど、本当はこっちのほうがすごいことを言ってるから混ぜたらどうですかって提案するべきだと思うんだけどね。

なるほど、マイナスの意見も混ぜ合わせることでよりリアリティが出て、効果があると。

もう一つ大切なことは、僕はボディブローみたいなものじゃないかって言ってるんですけど、じわじわ効いてくるんですよ。しつこく続けないとって。ボディーブローCMだって。ボディブローみたいに、じわじわ効いてくるんだから、我慢して打ち続ければいいんだよって言い続けてるんだけど。

ブラウンも少しずつ変えてはいるんだけど、基本姿勢は絶対変えないわけですよ。街頭でつかまえて、「コンコン」ってやってもらって。マンネリもちゃんと作るのが大切なこと。

桑原さんが現場で心掛けていらっしゃることは何ですか?

僕が演出するのは、出演者を演出するよりも、こっち側の周りを演出しますよ。

音に関してもそうで、本当のインタビューって、僕もインタビューやるけど、相槌って打たないじゃない、声が重なったりすると。黙って頷いてるけど、あれは逆にすごく喋るほうがやりにくいから、僕は声が重なってもいい、ノイズが入ってもいい、電話が入っても何をしてもいいから、雑音全然構わないって言って。わざと雑音があるほうがいいって、わざとザワザワさせるわけ。そうじゃないと、さっきまでザワザワしてたスタジオなり、ハウススタジオなのに、急にシーンとなると、一般の人はもう始まるかなって思うじゃない。

一番大切なことは、作りすぎない、臨場感というか、ライブ感だね。

最後に一般生活者を起用した広告、特に実証広告に関して、まとめの言葉をいただけますか?

テスティモニアルって面白いですよ。何が出てくるか分からないし、どういうものになるか分からない。我々がこの机上で考えること以上にね。だから続けるわけですよね。考えたことしか出てこなかったら、それは採用されないもんね。ただし、面白いけどインタビューは大変だし、カメラマンも大変なんだけど、できあがりで何が起きるかわからないから。考えていること以上のものが出ると、それが楽しいですよね。

ちゃんとやれば効果は出ると思うんですよ。ちゃんと真面目にやればっていうか、「適当にインタビューでもやったら」っていうんじゃなくて、やるんだったら結構大変だから、大変なことを覚悟してやれば、それなりの結果は出ると思う。

あとは、カビキラーならカビキラーの、やっぱり一つのテーマとかあるでしょ?自分のところのスタイルを持ってるじゃないですか。テスティモニアルかどうか分からないけど、ピカピカの一年生だって、すごくいいCMだと思うけど。一つの徹底したカラーを追求したでしょ。だから、そういうことを同じ立場でいろんな会社でやろうとしてるんだろうけど、自分のところのカラーを持ってないと思うんですよね、スタイルとして。なかなか難しいと思うんですけど、どこがやっても同じじゃなくて、その企業のカラーが出せれば一番いいよね。

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桑原監督インタビュー全文ダウンロード



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クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、桑原昭二さんです。