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寄藤文平 アートディレクター、イラストレーター インタビュー
(略)  ・・・寄藤氏  ・・・e-Spirit

今の仕事につかれたきっかけをお聞かせください。

出発はデザイナーです。その後、雑誌のアートディレクターをしている先輩に頼まれて雑誌にイラストを描くようになりました。 デザイナーとして描いていたカンプ用の絵と同じような、説明的なトーンのイラストが意外に評判が良く、イラストの仕事が増えました。

今では、アートディレクター・イラストレーター・グラフィックデザイナーと、いろいろなスタンスで仕事をしています。

広告をどのようにお考えですか?

広告といっても大きいので一言では言えないですね。クリエイティブということで言えば、 僕にとって広告を作る技術というのは、とても洗練された『編集技術』です。 僕は書籍のブックデザインをしたり、自分でも本を作ったりしていますが、広告と書籍の編集はとても似ています。

一冊の本を作る場合、その本で言いたい事が何なのか、ハッキリしていないと本になりません。 説明の順番が間違っていると、読者は理解できないですね。

書籍だと100ページから200ページぐらい使って、丁寧に内容を伝えるわけですが、広告は100ページで伝えたい事を1ページでやっているという感覚だと思います。しかも、発信者が個人ではないし、場所が屋外だったり、新聞だったりします。だから、書籍よりも簡単な原稿なのに、作る過程はずっと複雑に感じます。

広告で使われている編集技術というのは、ものすごく高い精度なので、他の分野でいくらでも応用がきくと思います。 今、クリエイターと呼ばれる人達が、いろんな分野で活躍されていますが、 たぶんそれができるのは、センスや技術に加えて、強い編集力があるからではないかと思っています。


『大人たばこ養成講座』の、イラストはどのように生み出されているのですか?

基本は言葉です。言葉が無いと絵が浮かばないんですよ。コピーライターの方と一緒に作るんですけど、 切り口の部分はコピーライターの方が考えてくださいます。その切り口を見つけるために2人で会話をしたりもします。

その出てきた言葉に対して、ひとつひとつ絵をつけていくというスタイルになります。『言葉に対してどう絵が存在するのか』ということについてはすごく考えていますね。

例えば「紙の生産量は年間500t」という言葉があるとして、絵が「切り株」なのか、「紙の束」なのかで意味合いは全然変わってしまいます。 イラストと言葉との距離感を意識しながらアイデアを考えていくようにしています。

言葉に対するイラストを見ると、すごくユニークだと感じられます。どのように工夫されていますか?

難しい言い方になってしまいますが、『言葉』がそこで言いたい『意義』に対して絵をつけています。
『言葉』のそのままの意味じゃなくて。それがもしかしたら、ユニークと感じられたのかもしれませんね。

「死にカタログ」という本を制作されたキッカケをお聞かせください。

「死」というのは多分、誰もが興味があるはずだし、避けて通れないことなのに、そのことに対して答えてくれるもの、 文献などが少ないという感想が一つあったんです。

例えばキリスト教の人は毎週ミサに行ってお祈りしたりするけど、日本人はあんまり習慣もない。 死を考えていないというよりも、死を考えるための道筋そのものがないかんじがしました。 そういう自分にとって必要な本というのはどういう本だろうと思いました。 本の内容も、どっちかというと事例を並べて結論はそんなに出していません。そのほうが自分自身にとってリアルだと思いました。

死というのは、イメージの王様なんです。デザイナーとしてもそのイメージの王様に取組んでみたいという気持ちはありました。 いろいろな死を、「イメージ」という視点から集めて並べて、本にまとめたのが「死にカタログ」です。


今後のテーマとしてあげていきたいものはございますか?

今、『血』の本を作っています。年末もしくは来年に発売予定です。

どのような内容ですか?

テーマは血液型です。血液型って言うと人間の話だと思うかもしれませんが、ブタや、サルにも血液型はあるんですよ。 実は植物にも血液型があるんです。血って、みんな知っているつもりになっていますが、本当はどんなもんだか、実は良く知らないんですよね。

ちなみに文平さんは何型なんですか?

僕は、B型です(笑)。

実際どうですか?

今、読んでいる医学系の文献の中に、B型の人は、想像力を働かせる事で、ストレスが生み出す負担を軽減しているという記述をみつけました。 それは、すごくあたっている感じがしました。強いストレスがあっても、変な妄想や、どうでもいい想像をしているうちに、かなり楽になります。

健康ってことで考えても血の問題はとても大きい。といっても、血はそう簡単には悪くならないんです。 一瞬悪くなっても、すぐに元通りになります。ドロドロ血とかサラサラ血なんて実際にはないんですよ。 もしも本当にドロドロになったら、死んでしまうんです。それだけ、体が血を最優先にしているという事でもあります。

寄藤文平さんが今後どういう挑戦をしていくかお聞かせください。

それを今、ちょうど探している途中です。
大きなテーマとしては、身の回りのイメージをきちんと設計しなおしたいという気持ちはありますね。

今やっている仕事そのものがそうなわけですが、さらに踏み込んで、イメージが正確じゃないものを、きちんと正確にしたり、 ごちゃ混ぜになっているイメージを整理したりしたい。そういうことはデザイナーとかアートディレクターでないと、できないと思うんですよ。

ウンコとか死とか、今回の血もそうですが、一番自分自身に近いところさえ、具体的に知らずにイメージで生きていたりするんです。 歴史的にみても、これほどみんなの頭の中のイメージ世界が巨大化している時代はないような気がします。 そういうイメージ世界そのものにデザインが必要なんではないかという気がしています。




寄藤文平 アートディレクター、イラストレーター up

クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、寄藤文平さんです。