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江口カン氏
(略)  ・・・江口氏   ・・・e-Spirit

映像の仕事をするきっかけは?

高校の時、友達がビデオを買って、じゃあ映画を撮ろうということになり、僕が監督で、映像を撮りました。そこで映像の魅力にとりつかれました。

少年時代のことをお聞かせください。

 自分でいうのもなんですが、やんちゃな子供でした(笑)。
小学校の時とかは、よく寄り道をしていました。当時、通学路をはずれると大人たちにすごく怒られるのですが、決められたコースからはみ出ると、自分の道を発見できて楽しかったですね。

学校から帰るとTVをつけて「吉本新喜劇」「お笑いスター誕生」「松竹新喜劇」見ていました。特に藤山寛美さんが好きでした。あの「笑わせて、泣かせて、泣かせながらまた笑わせる」というのがすごいですよね。

やはり子供の頃から「面白がる」ポイントを見つけるのが上手だったんですね。
監督のCMのコンセプトをお聞かせください。

見る人を楽しませるエンターテインメントに徹したいです。

心の葛藤だったり、人間関係だったり、そういったドラマが映像の中や、雰囲気で見えてこないと見ている人の心には触れられないと思います。感動する、人の心を動かすものをつくりたいです。

人に感動を与えるために必要なことはどんなことだと思われますか?

「感動」=「感情が動く」ということだと思うので、まずは作品の中に違和感なく 入り込める世界観を構築することが必要だと思います。

映画や演劇を見ていると、シチュエーションが現実的ではないモノでも人はリアルを感じることができます。それはおそらくその世界観に見ている人が入り込んでいけるからだと思うんです。

例えば、福岡ソフトバンクホークスのCM「ベースボール・スパーリング篇」でも、バットが折れたら当然周りのオーディエンスも盛り上がる、選手も気合が入ってくるとか。

そういった空気感とか雰囲気づくりに時間を割きます。エキストラの人達にもちゃんと説明して、選手の方がこういうアクションをするので、そのときはこうしてくださいとか。そういったリアルな感じは大切にしています。

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演出するうえでのこだわりをお聞かせください。

事前の準備にとても時間をかけています。
絵コンテやキャスティングなど、基礎の部分を しっかりと作るようにしています。

例えるならば、企画コンテを作る作業は「作曲」で、現場での演出は「コンサート」のような感じです。
でも、企画コンテを演出コンテに落とし込む時は、悩みつくします。直前まで悩んでいて、東京に向かう飛行機の中で演出コンテを書いていたら、スチュワーデスさんに「絵がお上手ですね」って言われたこともありますよ(笑)

準備が9割8分現場が2分です。そして、残りの2分で「キラキラした何か」を見つけたいといつも思っています。準備があるからこそ現場での思いつきにもチャレンジできるんですよね。ルイ・パスツール(細菌学者)の言葉で「偶然は準備のできていない人を助けない」というのがありますが、僕もそう思います。

アイディアはどんなときに生まれるのですか?

毎回本当に苦しみます。
なかなかコレというのが出てこなくて「ついにダメなのか」と思うことがよくあります。そんな時は藁にもすがる思いで、脳が活発になるグッズを通販で買ってみたり、以前にお風呂でいいアイディアがでたから…とお風呂に入ってみたりといろいろもがきます。

まぁ、そんなものに頼ろうという気持ちがすでにダメなんですよね(笑)。でも、答えは必ずあるんです。それを信じて毎回苦しんでます。

キャスティングについてはいかがですか?

僕の好きなタイプは「目力のない人」。これが結構難しいんです。俳優さんやタレントさんはやはり押し出しの強い方が多いので、基本的に「目力」のある人なんです。

でも、僕も作品には、ごく普通の人が事件に巻き込まれてしまうといったような設定が多いので、いかにも「巻き込まれそう」な人がマッチしているんです。

最近では、いろいろな場所でこのキャスティングの好みについて話しているので わざと「トロン」とした目つきで、オーデションに挑む人がいるんですよ(笑)

現場ではどんな形で演出されるんですか?

コンテ通りにキッチリやらなければいけないとは思っていません。人を活かすことが大事なので、その場でセリフを変えたりすることもありますし。

表現が縛られるのが一番よくない。せっかくの面白いものを逃してしまうこともありますから。準備という基礎があるので、現場では余裕をもたせて、そのときの流れに対応できるようにしています。


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監督は福岡をベースに活動されていますが、東京に拠点を置く予定はないのですか?

僕は多くの人に楽しんでもらうCM、共感されるものをつくりたいので、「大衆の少し先にあるものを知っていれば十分」なんです。感性や技術、時代を見抜く力。「映像をつくる上での筋肉」みたいなものは、福岡にいても養えると思っています。

監督の考える「多くの人に楽しんでもらえるCM」とはどんなものなんでしょう?

日常的な気付きというか、日常の気持ちから少し気持ちが動くものがいいなと思っています。「笑える」とか「カッコイイ」とか、そんなちょっとした気持ちの揺れを引き出したいです。

依頼される企画の中にはエンターティメント性よりもリアリティーを大切にしたものもあると思うのですが、そんな時にはどうされるのですか?

時によっていろいろな方法をとりますが、「僕ならこうする、それが難しいならお断りさせていただく」、と言う場合もありますし、企画に沿ったものと自分なりのアプローチのものの2つを制作して、両方見せるということもします。

後者はかなり労力がかかりそうですね…

そうですね、時間のないときには難しいやり方ですが、相手にご理解をいただくには一番いい方法だと思います。とはいえ、CMは広告ですから、表現の制約や縛り、モラルといったもののハードルは高いです。でも、僕は映像の中でもっと人間の持つ内面の部分を表現した方が良いと常々思っているんです。コンプレックスだったり、少しダークな部分だったり。

ただ、そういったものをCMの中に取り込むのは、やはり難しいですね。

今後挑戦してみたいことはありますか?

やはり、もっと表現の縛りのない場所で作品をつくってみたいという思いはあります。人の心の機微みたいものを表現できる作品がつくりたいです。

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江口カン氏
クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、江口カンさんです。