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関根光才氏 インタビュー
(略)  ・・・関根光才氏 ・・・e-Spirit

子供の頃から映像の仕事をしたいと思っていらしたんですか?

特に意識はしていませんでした。でも、父が造形作家だったり、美大を出ていたりしてちょっとそうゆう匂いのある家庭だったんですよ。
そんな中で育つと逆に「普通」でいたいという気持ちが芽生えてきて、できるだけまともな仕事に就きたいと思っていたんですよね。大学も上智の哲学科で、映像とか芸術とかに関係のないところでした。海外留学をして、そこで写真の勉強とかをする機会があって、映像の面白さに目覚めてしまったみたいな感じですね。

CM関係の仕事をはじめたきっかけは?

映像関係の仕事で何かと探したときに CM製作会社を見つけて就職したというのが経緯です。しばらくはプロダクションマネージャーとして働いて制作の全般を学びました。その後、会社を移ってディレクターとしての仕事をするようになったんです。プロダクションマネージャーだった頃にも常に「自分だったらどう撮るか」 についは考えていたので、演出の仕事をするうえではすごく役立っていると思います。

自分で作品を手がけるようになって間もなく、海外の映画祭で賞を受賞されましたよね。受賞作となった「RIGHT PLACE」についてお伺いしたいのですが。

2005年、AdFestで脚本を認められ、ショートフィルムセッションに日本代表として参加したんですが、まだほとんど作品を撮っていないのに「CMディレクター」という肩書きでエントリーされていて(笑)。やはりこれはCM的なアプローチも取り入れないといけないなという思いはありましたね。いろいろなショートムービーを見ていくうちに、CMとショートムービーというのは共通するところがあるなと思ったんです。ひとつのアイディアに固執しているようなところとか。

どんな作品を創ろうかと考えたときに、「CM監督として次のワークにつながるものであること」、「日本人ということを生かしたものであること」、「どこの国の人が見ても分かる内容であること」、といったことを意識しました。最初に必要な要素を考え、それを最も魅力的に見せられる表現は何かという順番でできたものですね。

確かに、“あるべきところにモノがないと気がすまない”という男性は いかにも「日本人的」ですし、セリフのない作品なのでどんな国の人にもわかりやすいですよね。

そうですね。几帳面な性質は日本人に持つイメージのひとつだとは思います。
ただ、映画祭でも作品を見た外国人の反応として「自分も同じ性質なんだ」と言って来る人が意外に多くて驚きました。僕自身はまったくそうゆうタイプではないのですが、すっかり「RIGHT PLACE」な人だと思われていましたけど。「RIGHT PLACE」はすごくニッチな表現ですが、誰でもああした部分はあると思うんです。ニッチな部分からマジョリティに通じる部分を見つけてアプローチしていくというスタイルが好きなんですよね。

お話を聞いていると関根監督の作品へのアプローチは、とても論理的な思考から始まっているように感じますが

大学が哲学科だったからかな(笑)。いろいろと考えるのが好きなのかもしれませんね。 やはり、映画祭などではある程度の戦略は必要だと思います。
僕はアイディアベースの作品作りをするタイプなので、ただ思いつきでとか、こんな映像が撮りたいといった感覚で撮るよりは、要素を組み立てていくほうが自分らしい作品になるんですよね。戦略として考えたものと、自分のやりたいことが同じ頂点になる時が一番いい状態ですね。なかなか難しいんですけどね。

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『すべてはアンコントロールなもの』

海外で評価が高いということに関してはいかがですか?

先ほども少しお話しましたが、海外の映画祭やコンペティションに出展するときには<日本人であること>を意識して、というかそれを生かして作品を創ることが多いのでその部分で際立っているところはあるかもしれません。
実際に海外の作品にはアイディアの基準が違うなと感じるものも多いですし、賞を頂いたり評価してもらうことはいい刺激になっていると は思います。

監督自身はどんなタイプの映像がお好きなんですか

映画やCMなどカテゴリーによっても違いますが、基本的には固定された視野で描かれていないものが好きです。映画だと、ヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」とか。 違う人間の視点から観る感じとか、何かが少しズレているような感覚がいいなと。 旅をするのが好きなんですが、異国で知らない人に会ったり、違う文化に触れることができるので、作品を創るうえでも役立つことはありますね。

CMではどんなものが好きですか?

学生時代、まだこの仕事をするなんてまったく思っていない頃は、『日本CMって物足らない』と思ってました。それに比べると海外で観るCMには驚かされるものが多くて、なんというかメッセージ性が強くて印象に残っています。

もっと自由に作りたいと思うことはあります?

そうですね。でも、CMは広告ですから、表現方法に制限があったり、いろいろな面で制約があるのは当然だと思っています。「制約があるから面白い」という考え方もできると思うんですよ。様々な条件の中で、どうやって自分の思い描いていることを表現できるか、そのバランス感覚はすごく重要だなと感じますね。

海外でCMを作ってみたいという思いはありますか?

もちろん機会があればやってみたいです。オファーを頂いたとこともありますが残念ながら実現していませんが。まぁ、日本人の監督に任せるとういうのに不安はあると思いますけど。


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アイディアはどんなときに生まれることが多いですか?

僕の場合、アイディアベースの作品創りをするのですが、本当にとことん考えます。
一日中そのことばかり考えていて、いつ思いついたのか分からないくらいです。おそらく人の10倍くらいは考えているかもしれません。僕はすばらしく才能があるというタイプではないと思っているのでそれをカバーするのは努力しかないなと。アイディアが生まれるまではとにかくとことん考えつくします。
音楽が好きなので音楽からヒントをもらうこともありますね。特にその曲をCMに使うということではなく、イメージが膨らむという感じに近いですね。

CM制作で企画から参加されることも多いのでしょうか

そうですね。けっこうあります。福岡の人権尊重習慣のCMも企画から参加したものですね。
賞などに出すときは自分でプランニングしたほうがやりやすいというのはあります。
逆に NEC、「鼻が鳴ってしまう癖がある女性」のCMは、僕の企画ではありませんが、発想がすごく近いものだったのでやり易かったですね。

キャスティングについてはどうですか?

単純な好みでいえば「ちょっとヘン」な人が好きです。可愛いとかキレイとかだけではなく、個性があって、印象に残るタイプが好きです。でも、あまりに個性の強い人を起用してしまうと作品が食われてしまうこともあるのでその辺りのバランスは大事かなと。

今後、挑戦してみたいことなどはありますか?

やはり映画は最終目標なので、チャンスがあればやってみたいと思っています。
これまで手がけてきたショートムービーのようなスタイルではなく、メッセージ性が強いものですこし長いものに挑戦したいですね。CM監督が映画を撮った、という見え方ではないものを。
映画やCMという枠にとらわれず、映像を通して世界中の人と交流できるようなことを企画してみたいと思っています。

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「JEMAPUR」 PV Pro:太陽企画株式会社 Dir:関根光才


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クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、関根光才さんです。