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瀧本幹也氏 ・・・e-Spirit 写真に目覚めたのはいつ頃からですか? 「写真が僕の趣味」という自覚が芽生えたのは、一眼レフのカメラを買った小学5年ぐらいの時からでしょうね。普通は「鉄道が好き」とか、好きな対象物があって写真を撮り始めると思うんですが、僕の場合は絵を描く代用品という感覚で写真を撮る。つまり、写真を撮るという行為自体が好きだったので、何を撮っても楽しくかったですね。 その後、どのような経緯を経て、写真家とし てのキャリアがスタートするのですか? 「強い決意をもち、カメラマンになることを宣言し、高校を辞めて……」と言葉にすると格好いいんですが、実はそうでもなくて(笑)。「学校で因数分解の勉強をするんだったら、プロの現場でカメラの勉強をすべきだよな」という思い先行型でしたね。そんな経緯で学校を辞め、地元の写真館で機材の扱い方や撮り方などスタジオの基礎を学び始めました。そして17歳のときに「いざ東京!」へ。駆け出しのスタジオマン時代は、ひたすら練習・素振りの日々でした。基礎に対する応用、ライティングやセットの組み方など、技術的なことを学んだ時期でもありました。ひと言で表現するならば「自分を追い込んでいた時期」だったと思います。 この時期に師匠である藤井保さんと出会ったわけですよね。
自分の立ち位置を理解したうえで、世の中に伝えるべきことをきちんと考えて提案する。何が世の中に足りないのか、何を伝えないといけないのか。藤井さんの元でのアシスタント時代には、技術的なことはもちろんのこと、今のモチベーションに繋がる、一人の人間としての生き方・考え方について勉強させていただいたと思います。
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現在、広告写真のほか、瀧本さん自身がテーマを決めて撮影する作品も数多く発表されていますが、撮影するにあたり、その面白さは異なるものですか? 「自分が楽しめないと見ている人も楽しめない」という思いがあるので、広告写真でも自分の作品でも、シャッターを押している瞬間は優劣なく、撮っている喜びをダイレクトに感じますね。両者とも、楽しんで撮っているという意味ではその面白さに大小はないと思います。 クライアントありきの広告の仕事。瀧本さんは提案されたコンセプトに対してどのようなスタンスで望んでいるのですか? 「この仕事はどうすれば楽しい仕事になるのか?」ということを第一に考えます。ここに特化していった方が良くなりそうだとか、構図に変わった感じを入れてみようとか、皆が満足できるようなゴールを目指しながら、現場を楽しむように心掛けています。前述のようなスタンスで望んでいると、ある瞬間から、広告写真でも自分の作品を撮っている感覚に変わっていきますね。 そんな感覚を現場ごとに楽しんでいるわけですね。 僕の場合、こうじゃないと駄目だというよりも、仕事(コンセプト)に寄せていく・伝えたいことに寄せていく方が性に合っているのかもしれません。 自分の立ち位置を理解したうえで、伝えるべきことをどのような方法を用いて形として表現していくべきか。柔軟な姿勢で望む方が、現場ごとに自分なりの新たな発見がありますし、結果としていいものが作れるとも思っています。 作品撮りのときにも、この柔軟な姿勢は変わりませんか? 撮影するコンセプトさえ自分の中で決まっていれば、「伝わりやすい構図かどうか、どう撮ればよいのか」ということは、後から付いてくるものだと思っています。それゆえ、作品撮りの現場で僕がするべきことは、目の前で起こっているドキュメンタリーを切り取ること。つまり、小学生の頃から大好きな写真を楽しんで撮るという姿勢は変わっていないんです(笑)。 |