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井上卓 インタビュー 「スゴイ!コンピューターを使って絵を動かせる!」
(略)  ・・・井上卓  ・・・e-Spirit

井上さんの子供時代の話をお聞きしたいのですが?

とにかく毎日、絵を描いていましたね。記憶がない時期から絵を描くのが大好きだったと記憶しています(笑)。
アニメのキャラクターから街で見つけた生き物まで、描く対象物はなんでもOK!
近所の油絵教室に通い始めてからは、さらにその熱が加速しましたね。
そうそう、立体物を作るのも好きで、家にある割り箸や爪楊枝をすべて使ってしまい怒られた記憶もあります(笑)。ひと言で表現するなら、やんちゃな文化系だったと思います。

中学や高校時代も変わらず、何かをクリエイトすることは好きでしたか?

バレーボールなどの運動部にも所属していましたが、何かを作り出していく作業は変わらず好きでしたね。高校時代は美術部に所属し、本格的にデッサンに取り組んでいました。
幼少期から創作活動のベースになっている、日本のアニメに深く興味を持ちはじめたのもこの時期からですね。
なかでも、テレビアニメよりもクオリティの高いアニメ映画やOVAにハマりましたね。TVアニメには無かった大人っぽいストーリー展開はもちろん、映画特有の緻密な作画や背景美術にも「すごいぞ、コレ!」って共鳴していました。

大学ではどのような勉強をしていたのですか?

芸術学部デザイン学科に入り、デザインに関する総合的な勉強をしていました。
なかでも一番ハマったのが、コンピューターを使って作品を仕上げる授業でしたね。
MACをひとり一台与えてもらえる恵まれた環境で、完全にハマリましたね、MACには(笑)。
書き直しがいくらでもできたり、当時共鳴していたアニメチックなトーンを容易に作れたり……。
ソフト1本で静止画を動かせるようになる、この事実は僕にとって大事件でしたね!

当然、動画制作に熱中していくわけですよね?

それはもちろん(笑)。
”漁師が海に出て伝説の魚を釣る”というテーマで3分間の物語を作った時(卒業制作)なんかは、学校に泊まり込んでいましたから(笑)。
「動画アニメーションの制作にハマり、試行錯誤し続けた4年間」だったわけです。

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「いかに刺激的かつ、インパクトのある作品を作れるか!」

大学卒業後、ゲーム会社に1年間在籍。その後、MTV JAPANに入社するわけですよね?

ゲームクリエイターとして仕事をしていた当時、MTV JAPANのウェブサイトに面白いアニメーションがたくさんアップされていたんですね。
それに刺激を受け、仕事の傍ら「MTV Station-IDコンテスト」に応募したところ、運よく賞をいただき、そのことがきっかけとなりMTV JAPANの門を叩きました。

MTV JAPANではどんな仕事を?

番組と番組の間に流れるスポットを担当していました。MTVのロゴが映像の中に入っていれば「あとはどんなものを作ってもOK!」というディレクター冥利に尽きる、刺激的な仕事でしたね。
当時社内に5人のディレクターがいたんですが、「いかに刺激的かつ、インパクトのある作品を作れるか?」という具合に、お互いにライバル意識をもち、切磋琢磨していた当時を思い出しますね。 納品の翌日に「やられた!」とか「そうくる!?」とか、ディレクター各人のリアクションをダイレクトに聞けたことは僕の財産でしょうね。

MTVといえば、24時間音楽のビデオクリップを流し続ける「音楽専門チャンネル」のイメージがありますが、井上さんご自身、MTV JAPANに在籍していたことで音楽に対する捉え方に変わりましたか?

海外の先進的なPVをいち早く見られる環境だったので、それはもう(笑)。
楽曲は知っているものの、PVを見たことがないものが殆どだったので「あ?こんな世界観だったんだ!」って。
なかでも昔から好きだったa-ha(アーハ)『take on me』の、ロトスコープによるスケッチ風アニメと実写とを巧みに合成したPVを見た時は衝撃的でしたね。

キャリアを進めていくなかで、PVの制作も手掛けるようになりますよね。ブロードキャストとは異なるPV制作の面白さ、難しさって何でしょうか?

PVの制作は音楽ありき。アーティストの楽曲の世界観をどう表現していくべきか? 伝えたいことの本質を見極めたうえで、映像を作っていくのは面白いですよ。

僕の場合、お仕事をいただいたら、その曲を聴いたファーストインプレッションから導き出された映像コンテをアーティストに提案するようにしています。その後、アーティストと話をし、肉付けしたり軌道修正したりしていきます。
PVの仕事は、楽曲単位でまったく異なる世界観を表現できるので、ホントにやりがいを感じますね。

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「受け手にひっかかりのある、いたずら映像を作り続けたい」

ブロードキャストやPVだけにとどまらず、CMも数多く手掛けられていますが、なかでも印象に残る作品を教えてください!

うーん、いろいろありますね(笑)。
最近手掛けた中では『ブレイド ブラッド・オブ・カソン』TV版DVDのCM制作が印象に残っていますね。何も決まっていない企画の段階から携わり、「スザンヌさんでいきましょう!」とキャスティングの段階からアイデアを提案できましたから。
ヴァンパイアと人間の混血であるブレイドが人類を守るためヴァンパイアハンターとして戦う……という本編のストーリーをヒントに、やられる側のヴァンパイアにキュートなスザンヌさんを起用し……という具合に。
自分のやりたい方向と商品のイメージが合致すると、それはもうディレクター冥利に尽きますね。

『ブレイド ブラッド・オブ・カソン』の場合、スザンヌさん扮するキャラクターから派生し、キャンペーンサイトが立ち上がったり、WEB限定バーションのCMが流れたりと、多くの仕掛けがありましたよね。

企画やそのキャラクターを肉付けし、効果的にどう宣伝に結びつけていけるか?
もっと言ってしまえば、どうやって消費者の印象に残るプロモーションをできるか。
メディア戦略も含めて、制作過程における作り込みを熟考できるCMづくりは、とてもやりがいを感じますね。

ちなみにCMにおける、キャスティングに対するこだわりはありますか?

共通していえることは、有名無名を問わず、表情豊かな人が好きですね。
当たり前のことですが、受け手は画面を通してしか、そのCMの世界観を感じることができません。ゆえにキャスティングでは、キャラクターの存在感を存分に発揮できる人を求めたいですね。

最後に、井上さんが今後挑戦したいジャンルのお仕事を教えてください!

今後も活動の場を限定することなく、自分の世界観を表現できる映像作品を作っていきたいと思います。
モノ作りができるのであれば、とくにメディアに対するこだわりはありません。

いちばん興味があるメディアは何ですか?

うーん、なんだろう。ウェブのCMはこれからもっと面白くなる気がしますね。
受け手も参加しやすいインタラクティブなメディアなので、秀逸な仕掛けを作れば、新たなコミュニケーションが生まれるんじゃないかな。
そのために僕ができることですか?
いたずらな映像を作り続けることですかね。
「いや〜面白い映像だね!」っていう(笑)。

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井上卓プロフィール ディレクター
1975年生まれ。
東京工芸大学芸術学部デザイン科卒。
98'MTV Station-IDコンテスト受賞をきっかけに、翌年MTV JAPAN入社。
MV・CM等の映像ディレクターとして、P.I.C.S.を経て2006年10月独立。
2003年PROMAX&BDA USA「MTV Image Campaign-TEPPEI/GLOVER/MIKO-篇」プラチナ賞受賞。
2004年エジンバラ国際映画祭や世界最大のデジタル映像フェスティバル-onedotzeroによる作品招待。
annecy2006(フランスアニメーションフェスティバル)3作品作品上映。
2007年文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品受賞、「SHOTS」掲載等、海外での作品上映・受賞多数。
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クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、井上卓さんです。