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神原秀樹氏
瀬戸内少年、ポジションは「道」 瀬戸内少年、ポジションは「道」。
(略)  ・・・神原氏   ・・・e-Spirit

今日はその迷彩柄のジャケットを引っぺがすつもりでいきますので、覚悟の程よろしくお願いします。

ああ、いや、ややこしい質問や難しい質問は、関口現さんと同じということで、引用していただいたりしてそこはひとつ・・・現さん好きなんで。

いやいや(笑)、まず こどものときのお話を聞かせてください。

広島県福山市藤江町という尾道のとなりの町で生まれました。家から10分西に歩くと海、10分東に歩くと山、間は民家に田んぼや畑という典型的な瀬戸内の田舎です。何のへんてつもない日本の田舎だと思ってましたが、テレビで風景が映ると「ここ瀬戸内だ」って瞬間的にわかるのは、何のへんてつもなくもない所なんでしょうか。

子供の頃はどんな遊びをしていたんですか?

とりあえず子供がやる遊びは全部やりました。なにせ瀬戸内ですから。ぼんやりと過ごしやすくて、ダイナミックなものこそないけれど過不足なく全部揃ってましたから。
ひとつ特徴的なのを挙げると、小学校低学年の頃田んぼで野球をやってたことかな。田んぼもそんなに広くなくて、段々になってたりして、上の段が内野で下の段が外野。僕はルールをよく知らなくて、周りから「全部振るな!全部振るな!」ってやたら怒鳴られてて、半分でバットを止めたりするけどそれでも「全部振るな」って怒鳴られて。ストライクとボールがあることを知らなかったんです。暴投でも来る球は全部振って当てなきゃいけないと。そんな僕の守備位置は下の段の田んぼの脇の道でした。道の後ろは小川で、「ボールが川に落ちないように絶対止めろ」と言われて。(笑)だから、上段からは死角になる場所もあったので、そっとグローブを道に置いて近所のマミちゃんちに遊びに行ったりして。当時、瀬戸内の田園風景の中で忽然と少年が消えるという怪異現象が頻繁に起きていたんです。(笑)

で、マミちゃんちでお医者さんごっこしたり?(K注:Uさんは下ネタが大好きな一面もあるみたいです)

ええ、瀬戸内少年はお医者さんごっこが大好きですから!(笑)いやいや、マミちゃんと何してたのかあんまり覚えてないです。・・・・あ、でも、お医者さんごっこと言えば・・・・これ、記事になれないと思いますが、マミちゃんとミキちゃんと3人でしました。「マユミ」と「ミキ」っていうとちょっと永井豪美少女キャラっぽいでしょ。しかも二人とも年は一っこ上。実際に、マミちゃんは極々たまに田舎にいる突然変異のようにアカ抜けて都会的でシュッとした美少女で、ミキちゃんはそれが少し親しみ易くなった感じ。10年後には如月ハニーかけっこう仮面かって感じの二人です。 思い返せば、そのハイレベルなキャストによるお医者さんごっこが僕のキャスティング眼を育んだのかもしれません。それに毎回応えてくれるe-スピリットさんは、素晴らしいとしか言いようがありません。
もしもe-スピリットさんがなくなったら、人類に「すばらしい」という言葉がなくなるかもしれない。

そうですか。

もとにもどります。絵を描いたりするのは好きだったんですか?

親が「絵を描きたい時は自由に使え」って、画用紙を常時200枚くらい置いてくれてたんです、米びつの上に。だからよく描いていました。高校時代は一応美術部でした。しかし、絵が好きで入ったというより、中学時代に柔道部に入ってて毎日心臓が飛び出るほど練習していたので高校になったらゆるいクラブに入ろうと、そっちの動機の方が強いです。

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そういえば、 そういえば、"辞令"もらってないです。

さて、太陽企画に入社されました。

最終面接で「採用予定は制作5人企画演出1人、制作の方が競争率低いけど、どうする?」って聞かれて、「どっちでもいいですと言っといて、ひとまず内定を貰っといた方がいいか」と一瞬頭をよぎったんですが、「企画演出が希望ですのでそちらでお願いします」と口を突いて出てしまいました。どうもそういう咄嗟の場面では「男らしい回路」にカチリとスイッチが入るみたいです。カッコイイでしょ。そうでもないですか。
で、「最初は制作を経験しとけ。そのあとに企画やらせるから」って言われ、まずは制作からのスタート。入社半年後にはみんなに正式な配属の辞令が出たんですど、僕だけもらえなかったんです。それで「辞令貰ってないんですがどこに座ったらいいですか?」って聞いたら「どこか空いているとこ、あ、あそこ。とりあえず、あそこ。」って制作部で適当に目に付いた席を指さされて。(笑)いやあ、当時は大らかでしたから。何かにつけて。

じゃあいつ企画演出部になったんですか?

言われたからってその席におとなしく荷物を置こうものなら、なし崩しでそこが僕の正式配属の席になるような気がして。だから僕は荷物全部を大きなカバンに入れて持ち歩いてました。「お前スタイリストみたいにいつも大きなカバン持ってるけど何が入ってんだ」ってよく言われました。
で、企画演出部に行って、「席が決まってないんで空いてるとこに座らせてもらっていいですか」って。先輩も僕が企画をやりたいっていうのを知っていたんで、「企画手伝ってよ」って。それで、時々人手が足りないからって制作部に呼び戻されたりしながらも企画の仕事が増えていって、一年ちょっと経った頃にはなし崩し的にもう企画演出部の人みたいになってました。だから、結局辞令は貰わないままになってしまいました。大らかな時代です。ははっ。

太陽企画のいいところってどこでしょう?

1人ひとりに平等にチャンスをくれる会社だというところです。ただ、それがチャンスだと気づくかどうかは、本人のセンスですけど。「シブイ仕事が多いが、いつかオレにも面白い仕事が来るだろう」なんて思っている人は、一生チャンスに気付けないかもしれない。後々になって「オレってけっこうバッターボックスに立ってたよなあ」って「なんで出塁できると思わなかったんだろう」って。

だけど、それはどこでもどんな仕事でもいえることですよね。

そうなんですが、太陽企画はそれがより平等にある会社だと思います。
僕は退社する時皆が集まる朝礼で、「これまでにいただいた教育の数々、それからチャンスの数々、そしてこれからの可能性の数々に対してお礼申し上げます。ありがとうございました。」って挨拶したんですが、これは紛れもない僕の本心です。本当にいい会社です。
あ、それともうひとつ挙げるなら、僕の一番好きなCMディレクターがいる会社です。


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バカの壁の中はカラッポでした。 バカの壁の中はカラッポでした。

神原さんの"声のアテレコ"で特徴的なものが、「日清食品 カップヌードルSio」と「鼻セレブ」だと思いますが。

「鼻セレブ」に関してはロスでロケをして出演者もアメリカ人で、ナレーションをどうしようかとずっと思っていたんですよ。 とりあえず本人の声も当ててみようかなと。外国人のナレーションはよくあるテクニックだし、そういう面白さって禁じ手に近いものだと 普段は思うんですが、今回はアメリカ産の素材ばっかりだしアリかなと。オフラインで女性が出演しているCMの締めには男の子の声を、男の子の出演しているCMには女性の声をと、クロスさせてみたら広がりができておもしろくなりました。
そういえばこのCM太陽企画制作なんですが、太陽企画オブザイヤーになったんですって。さすが瓜生さん、見事な選球眼。

「日清食品 カップヌードルSio」に関してはどうですか?

そういえば小島よしおさんのダンスに音を入れるかどうかで皆で随分悩みました。最終的に入れないでいきましたけど。ナレーションもそうでした。ナレーション無しでタイトルだけでいいんじゃないかというところから、子どもの声にしようという意見まで。 しかし、子供の声にしようと発案されたのはCDだったんですよ。子供の声って目立ち方としてこれまた禁じ手みたいなものじゃないですか。どうしても素直に受け入れられない感じがあったんですが、当ててみると結構おもしろい。そりゃあおもしろいに決まってるんだけど、そのおもしろさに「いやらしさ」がなくて単におもしろい。 これは目からウロコでした。勝手に禁じ手を作っている自分の「バカの壁」を反省しました。
撮影では、「演出も、カメラマンもいなかったようなCMに見えたらいいと思う。」をテーマにしてどうしたらそうなるかをカメラマンと一生懸命計算しました。 編集でもちゃんとしてないようなものを作ろうと、おいしくないカットをおいしくない切り方でつないだりして。徹夜して試行錯誤している内に演出コンテ通りの基本形ってやつを作ってないことに気づいて、こりゃいかんと10分くらいでバババとつないだら、それが一番おもしろかった。しかも演出不在なように見えた。
『そうか、僕自身がカラッポなんだから、僕の演出コンテをそのまま作ればいいんじゃん。』 きっと禅問答ってこんな感じなんですよね?
それにしても、瓜生さん選りによって何でこの2本を選ぶかなあ。僕にとって、反省も含め本当にいろんなことを考えさせられた2本です。


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「ロイヤル・ストレート・フラッシュ!!」 ロイヤル・ストレート・フラッシュ!!

『コマーシャル・フォト 』2010年2月号
神原さんがセレクターとなって「MY BEST CHOICE CM」を書かれていますね。

今の時代にのんきにCMのベスト5を選ぶのって、何かとてもピントがズレたことのように思えて仕方なかったんですよ。だけど、このズレピン状況で自分がどう折り合いを付けるのか、試してみようと思ったんです。実は。
「選んでコメントするならちゃんとコメントしたいので、インタビューじゃなく文章を書かせてください」って言って書かせてもらいました。インタビューだと何か気を使ってしまって、結局ミクシーのコメントみたいになるんじゃないかと思って。(笑)
で、一回書いてみたら文章量が2倍くらいあって、ベストを5つ選ぶのを3つに減らしてその分を文章に当ててもらうことはできませんかと相談したんですが、厳しく断られました。「デザイナーが、このレイアウトは変えない方がいいって言うんですよ」って。
文章って半分に削れるものなんですね。考えてみたら同じようなことを普段やってるなあと。30秒を15秒にしてるじゃないかと。雑誌の編集って映像編集と同じようなことをやってるんだと初めて知りました。勉強になりました。

おしゃれなんだけど深くて、独特の言葉と切り口が素敵でした。「かつてのヒーローは どんな致命的不自由を背負っているかもキャラだった」とか、「空気を意識したとき 翼が生える」とか、秀逸ですよね。

いやいや、はずかしいです。でも、これをやったことで、すごく嬉しい出来事があったんですよ。
セレクトするときに2時間約300本のCMが入ったDVDが送られて来るんですが、作品リストにはクライアント名、代理店名、制作プロダクション名までしか記載されていないんです。つまり演出やカメラマンなど、スタッフは一切わからない。
で、一番に選んだのが『日本郵政の年賀ハガキ』。大好きでした。このCMのシリーズだけ2時間分あっても飽きないだろうと思いました。とにかく撮影がすごい。編集がすごい。300本中この撮影をしているのはこのシリーズだけでした。「すごい!しかし、まだこの撮影を知っているのは一組だけだ!よかった!だが、また、しかし!その一組は確実にこの撮影をすごいレベルで遂行している。誰だ?誰だ?!」。いろんな演出やカメラマンを頭の中で組み合わせてみるんですが、さっぱり。
雑誌が送られてきて、真っ先にスタッフリストを見て、驚きと喜びがブワァーと沸いてきました。
リストに、「Dir=山本真也 P=田中創」ってあったんですよ。この二人は僕が一番好きなCMディレクターとカメラマンなんです。つまり、数あるCMの中で一番の大当たりを引き当ててたんです。制作プロダクションが東北新社だったのと、あまりに僕に近しい人だったというのが盲点になっていたんです。すべてが腑に落ちました。「あの二人ならこの撮影をするなあ。あの二人でよかった。」と、半月版が割れる程ヒザを叩きました。(笑)
何かすごい巡り合わせのようなものを感じました。「人生の必然!」。で、改めて自分の生い立ちに自身を持ちました。美談でしょ。(笑)カミサンに「すごいことがおきたぞ」って、ひととおり何が起きたか説明したんですよ。ウチは普段仕事の話はほとんどしないんですが。
他にも選んでたのは、現さんだったりシグマさんだったり中島信也さんだったり。とにかく僕の好きな人ばっかりで、 ノールックでポーカーをやって、カードをめくったらロイヤル・ストレート・フラッシュだった。
「MY BEST CHOICE CM」は、僕自身を再確認する、いい答え合わせをさせてくれました。『コマーシャル・フォト』さんには感謝感謝です。



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埼玉ゴズニーランドに行きたい! 埼玉ゴズニーランドに行きたい!

最近のCM・広告業界に対してどう思いますか。

はい、現さんと同意見です。

いやいや、何か言ってください。たとえば、新しい媒体が増えてきたことに対してどうですか。

Uさん、それはむずかしすぎる。・・・うーん・・・・うーん・・・・うーん・・・・、あっ「・・・うーん・・・」を半ページくらい書いて最後に「グーッ」って寝ちゃったことにするのはどうですか?だめですか。
うーん・・・僕は、ウチに帰るとまずWOWOWを点けるんです。前はフジテレビだったけど。専門チャンネルには入ってないんです。入ろうかと思ったことは何度もあるんですが、自分の好きなものばかり見てると狭い人になるような気がして。どこかのだれかが選んだ映画とかが一方的に強制的に流れてくるのがいいんです。それでずいぶんと知らない映画を好きになりました。
で、思うのが、人にはこういう受動的にインプットされるものは絶対に必要な気がします。ネットのように自分の価値観で積極的にアクセスしてインプットする情報と、テレビのように他者の価値観が一方的に送られてきてインプットさせられる情報と、社会的動物である人は両方を必要とするはずだと思うんですが。
で、人が生きるときこの積極的インプットと受動的インプットのバランスって何対何なんだろうと思ったりします。変化するものかもしれないけど、もしそれが測れるようになったら、その数値で広告のやり方や形が変化していくのかなぁ・・・あぁ、いやいや、とっても無責任にバカなこと言ってるような気もするなあ・・・第一こんなこと聞きたいんじゃないですよねえ。(笑)
なにはともあれ僕としては、業界が混乱してようが間違ってようが、メディアは何であれ、発注さえいただければOKなんですけど。で、できればその時「おもしろいものが作りたいんですけど」、とあれば尚うれしいんですけど・・・
こんなところで、今日は勘弁してください。さっきも言ったようにカラッポなんですから。

今後目指すこと、やりたいことはありますか?

はい。代理店担当の方に喜んで頂き、スポンサーさんにも喜んで頂き、不特定大多数の人に気に入られるCMをいっぱい作って・・・

思ってます?(笑)

思っていますよ!!商品がいっぱい売れ、スポンサーさんが儲かり、そして次の仕事も頂き、お金も沢山いただいて、そのお金で家族を「埼玉ゴズニーランド」につれていきたーい。(笑)。

何ですかそれ、ホントに思ってます?

アンダーグラウンドサーチライの「埼玉ゴズニーランド」という歌の歌詞にそういうのがあるんですが、本当に思ってますよ!僕はCMディレクターなんですから!!
「どこかにある、まだ見たことのない、とんでもなく面白いもの、見てみたいもんだ。」と、ディレクターズファイルのコメント欄にいつも書くんですが、自分はラッキーにもそれを作れる立場にいる。だから、作って、見てみたい。それは、ずっと思っています。
あと、足りないところは、現さんと同じで。(笑)


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【編集後記】

一見クールでカッコいいスタンスを取っているが、最後に「チャンチャン」とオチをつける神原監督の作品とご本人の言葉。 作品の話やその他の話……で盛り上がり、なぜか?インタビューは2日間・計4時間!(どれだけ無駄話の多かったことか)神原監督、本当にありがとうございました。続きは居酒屋で。


神原秀樹 up
クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、神原 秀樹さんです。