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串田 壮史氏 インタビュー
(略)  ・・・串田 壮史氏   ・・・e-Spirit

どんな幼少時代でしたか?

サッカー少年でした。今でも地元の大阪に帰って、フットサルをして散髪をしてくるというのが月一の行事ですね。
映像に興味を持つ入り口となったのもサッカーなんです。中学時代に見たアトランタオリンピックのサッカー日本代表戦で、目を奪われたのがスローモーション映像。僕は当時キーパーだったので、川口能活がボールに反応する姿や、スローでしか見えない汗とかボールの回転を食い入るように見ていました。何より「人間の動きってこうなっているんだ!」っていう感動ですよね。こういうのに興味ある自分を発見しました。

高校からはそこにUKロックも入ってきました。当時ブリットポップが流行っていて、オアシスやブラーをMTVで見て「PV作りたいな」って考えていました。現地の大学に行けばそのまま映像の会社に就職できるだろうとか…浅はかな考えですよね(笑)

ではイギリスでイチから映像制作を学んだわけですね

 「PVってどうやって作るんだろう?」なんてワクワクしてたんですけど、入学した大学が実験映像を作っている先生が多かったんです。定点カメラで水道を撮って10分間の映像にしていたり、カメラをぐるぐる回したり、アバンギャルドなことをしていて…。
しかもね、僕が行ったころにはもうブリットポップの流行が終わっていて、アイドルが主流。「なんやこれー!思ってたんと違うー!」ってなりました(笑)。
そんなこんなで、気づいたら僕自身も実験映像に影響を受け、裸で踊って旗を操っているような作品を作ったりしていました。

リール国際短編映画祭最優秀実験映像の受賞作でしょうか?

そうです。『FLOW』という作品で、それをピラミッドフィルムの就職のときも提出したんですけど「余分なものが省かれている」と評価されたことを今でも覚えていますね。説明しすぎていないことがよかったみたいです。


入社後に手掛けた作品を紹介いただきながら、いくつか思い出深いものを挙げていただこうと思うのですが、まずはアドフェス(08)や、文化庁メディア芸術祭(09)の受賞作である『REINCARNATION』から。

もともと関心があった“人の体の動き”で映像を作りたいというのと、大学の実験映像を作っていたころの気持ちが残っている作品です。
最初、僕が自分で踊るつもりだったんですよ。でも間に入ってくれた人がダンサーの森山開次さんを紹介してくださって。情熱大陸の映像を見せてもらったら「僕よりも全然すごいわ!」って思いました。いや、当たり前っすよね(笑)。
面識なかったんですけど、僕のやりたいこととそのとき森山さんがやっていたダンス公演が似ていて、同時期に同じことに興味を持っていたことで近いものを感じました。

リマーカブル・ディレクター・オブ・ザ・イヤー(2013)では、中島信也さんの好きな作品の一本として取り上げられたらしいですね。「いじめ」というテーマは、“いじめはダメだよね”という、ある意味答えの出ている問いで、その分難しさもあったのではないかと思うのですが。

僕が思う日本のいいところって、力を合わせるとか、みんなが同じであるとか、繋がりとか絆とか、島国だからこその考え方や文化なんだろうと思うんです。逆にそこから少しでもはみ出てしまったりすると、いじめにつながってしまう。根が深い問題です。だから「これは日本の文化なのか?」という問いかけをして、解決策は一つではないことや型にはまらないことで表現したいと考えました。文化は文化でも、受け継いでいかなければいけない文化と、逆に滑稽な文化がある。いじめは後者でしかないので、コミカルに描きたかった。
作品として口当たりの良さだけを意識したくないですね。当てに来てるってバレる作品ではなく、ずれてもいいから固定概念を壊したいというのがありました。

AEONワールドフェスタ「スペインフェア」は、イー・スピリットがキャスティングでお手伝いさせていただきました。

これについては話すことがいっぱいありますよ!
ギタリストがギターを弾くシーンがオチで、外国人の方をオーディションしたんです。
オーディションは10人いて、一番最初がアントニオ・バンデラス風なマッチョでカッコいい想像通りの人。「イメージ通りだし、この人かな」と思いながら見ていました。 そして10人目に登場したのが、エミリオさんという50代の方。胸元開けていて「ギターと女が好き」な雰囲気漂うエロスなオヤジ!って感じの人。意表を突かれて、グラグラっときたんです。
アントニオ・バンデラスでエネルギッシュなまま終わるのか、エミリオさんのセクシーさで、もわっとして終わるかっていう二者択一。固定概念もあるから一番目の人かなと思いながらも、決断を迫ってくる迫力がエミリオさんにはあるんですよ。その決断によって作品がどっちの方向にいくか決まるので、イー・スピリットさんの「お前はどっちを選ぶ?」というメッセージを感じました(笑)。最終的にはエミリオさんにお願いして、クライアントも納得でよかったです。
今回のように決断を迫られるオーディションに出会うと「俺は何をやりたいんだ」っていう根底を揺るがすものになるんですね。


串田さんの現場は、キャストもクライアントも笑いに包まれる不思議な空気があるんですよね。

リラックスしてやるのが一番ですからね。コンテも家で風呂に入りながら大枠を考えて、撮影現場で詰めていく。ハプニングも活かしたいし、対応して作り上げたいって思うのでガチガチに作っていくことはしません。頭の中だけで作ったコンテって、キレイすぎて息苦しいんですよ。多少破綻がないと。

キャスティングについて大事にされている部分はありますか?

オーディションで一番見ているのは素の部分です。普段暮らしている様子とか話し方とか、生きている普段がリアリティだから、そこから完全に離れらないと思うんです。
僕はよくその場で思いついたことをオーディションでやってもらうんですけど、その人の魅力がぽっと出てきたりするので楽しいですよ。だから、絶対オーディションに立ち会います。映像は人で出来ていくと思うので、これは外せません。
さっきのエミリオさんみたいに、話の作りそのものを左右してしまう出会いもあるし、人を見て「こうしよう!」と思いつくこともあって、良い影響を映像作品にもたらしてくれます。

今後の野望なんかはありますか?

広告映像では見せられないような作品作りですかね。長編への憧れもありますし。爆音でカメラグラグラ系とか。集客は見込めないですかね…。でもいくところまで振り切ってしまうと逆にいいかもしれないですし。映像の魅力は、ショックにあると思っていますので。

ありがとうございました!




串田 壮史氏 up

クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、串田 壮史さんです。