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久家友哉 インタビュー
「多くの人に見られる快感」 漫画が原点、演出に対する意識も強かった
(略)  ・・・久家友哉  ・・・e-Spirit

小さい頃の監督はどんな少年でした?

相当、漫画が好きでした。将来、漫画家になりたかったんですね。 でも、デッサンとかあんまり得意じゃなかったし、骨格も上手く描けなくて…。美大もギリギリ補欠で入学したんですけど、やっぱり絵がうまいヤツがザラにいるんです。そういうヤツの描く漫画って迫力があって、それと比べたとき「漫画家には、なれないかもな」って諦めました。当時、漫研とアニメーション研究会に入っていて、その時に動画の作り方を初めて知ったんです。映像なら…って、映像表現にシフトしていったという感じですね。

当時はどんな映像を撮っていたんですか。

映画とか、ドラマみたいなストーリーテリングをしようとは、全く思ってなくて、「こうゆう撮り方をしたら変なビジュアル作れるな」とか、とにかく実験映像をばっかり撮っていましたね。
この頃は、PVっぽいものに興味を持っていて、将来は、PVの監督もあるな…って思ってました。就活のときは、不純な動機なんですけど…「入社してできるだけ早くディレクターできる所ないかな…」って、調べてCM業界を選んだんです。募集が「ディレクター・プランナー」って感じで、結構すぐなれそうな匂いを醸し出してたんですよ(笑)。

入社後はいかがでしたか?

アシスタントプランナーだった1、2年目は、当然のことながら、仕事のデカイ発言者になれなくて。これが下積みかぁ…みたいな(笑)。
でも、そもそも何が正しくて正しくないのか、判断がついてないんですよね。しかも、自分にそういう自覚も無くて。だから先輩にも「君はまだ面白いってコトがどういうコトか、解らないだろ?」って言われましたね。
今振り返ると、確かにそうだったなと、解るんですが。 けど、その頃から「俺だったらこうするのに…」というイメージだけは、ひたすら持ってました。正しいか、正しくないかは別として。


個人として認めれるには 絵に対してのズレを作り出す

ディレクターデビューは3年目ですね

それまでもWeb映像などはやっていたんですけど、地上波初CMで初めて演出したのは、『和民』のCMです。イー・スピリットさんにも、お手伝いしていただきました。
まあ、3年目でよくやらせてもらえましたよね。打ち合わせ行ったときに「このコンテだったらこんな感じですかね」って粗つなぎしていったら「イメージがつきやすいね」って言われて、そのまま演出に活かしました。

撮影時に一番場を盛り上げてディレクションしてらっしゃったので、まさかあれがデビューだとは

規模が大きい撮影が初めてだったので、とにかく設定資料をたくさん作りました。先輩の現場を見て、演出の流れはなんとなくわかっていたんですけど、演者にどう伝えるか全然わからなくて。自分が想像してる世界観を一冊にまとめたんですね。
社長のテーブルにはこんな仲間で、その後ろにいるのが女子会のこんなチームみたいな。今思うと、そこまでしなくても…っていうくらいディテールをつめました。

『和民』のCMから派生してかりゆし58「流星 ワタミver.」というPVにもなっていますね

CMの撮影中、代理店のプランナーさんと「いい表情が取れてるのに、15秒にするのがもったいない」という話になって「…PV作っちゃう!?」って盛り上がったんです。オフラインの時に提案して、2日後くらいには、撮影してました。すごい流れですよね。

NHK60周年企画「未来テレビ」シリーズは、クスリと笑える要素が久家さんの味だなあと拝見しました

自分の創作の原点が漫画なので、やはりその感覚は入っているのかもしれません。「雰囲気で感じてください」という演出はしたくなくて「ここ笑えるよね」っていうポイントをハッキリと作る。そうする事で、短い尺でもしっかり伝えられるかなあと。
「自然番組(NHKスペシャル)」篇は“副音声でクマの本音が聞こえる”設定なのですが、見てる人たちの「クマってこうだよね」を裏切ったり、ギャップを見せた方がおもしろいと思って。クマが鮭取っている時に「鮭じゃなくマグロ食いてえー!」って言ったらちょっとズレるじゃないですか。そういう絵に対しての面白いズレが欲しいんですよね。それを見つけるために、作ってる時は嗅覚を研ぎすませるんです



今いわなきゃいけないことを伝えていきたい! 自分自身や仕事に対し、色を付ける時期が来た

「NEXON メイプルストーリー」ではHKT48の指原莉乃さん、「NHK60周年企画」では元モモクロの早見あかりさんなど、アイドルの作品が多いように思います。

ここ1年2年、人の演出…特にアイドルの人と仕事をさせていただくことが増えた気がします。多くやっている人からしたら、まだまだ少ないですが、作品を並べるとやっぱり目につきますね。たぶん「お前オタクだからいろんな人知っているよね」ってことだと思うんですけど(笑)。
指原さんの「メイプルストーリーメイプルダンス」篇では、結果的にNGのテイクが面白いね、ってなって採用したんです。でも、そのテイク以外に何度もテイクを撮ったんですね。正直、ちょっと申し訳ないことをしたと思っていて。
だから、早見さんのときは撮影する前にカメラマンとかなり打ち合わせをして、自分の中で「最低限、コレとコレがよかったら次にいこう」って割り切るラインを作るようにしました。限られた撮影時間の中で、よりベストな表情とか演技を狙うために。

オーディションなどで、モデルさんや役者さんを使うときは?

リクエストをしたコトに答えてくれるかを見ます。台詞のニュアンスや、動きをちょっと変えてみたりして。
台詞とか動きって、絶対現場でチューニングしたくなるんですよ。だから「この人は、現場でのリクエストに答えてくれるかな?」っていうのは常にチェックして見ています。
僕は、役者のイメージを固めているタイプなので、オーディションって的あてゲームに近くて、自分が思う真ん中のイメージに、どれだけ寄ってくれる人がいるかな?って感じで見るんです。でも、たまに全然的は違うんだけどそれもアリだなって人が来る。それがすごく嬉しいですね!発見があって。だから、キャスティングさんとか、それを専門にされている人の提案は大事にしています。正しいことが多いので。

最後に、今後のビジョンを教えてください。

最近、BS朝日のTV番組『アウトドアロックンロール』を演出させて頂いたコトもあり、入社当時全く興味のなかったドラマや映画への意識も高まってきました。
今の仕事に対して、どこかで一段階上げていかなきゃいけないと実感しています。「もっとトライをすべきだなあ」とか「自分が作ってる笑いとか、リアクションってあざといかもしれない」とか、いろいろ思うことが増えていて。
自分はオールラウンダーではないし、それを目指そうとも思ってなくて。そういう意味では、やはり武器は人を演出することなのかな、って思うんです。
そろそろ、フットワークの軽さから選ばれるっていうよりかは「こんな演出をするから久家を選ぶ」って言ってもらえる様な作品制作をしなきゃいけないなと。

ありがとうございました!



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クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、久家友哉さんです。