TOPPAGE 清水健太氏 インタビュー
(略)  ・・・清水健太氏   ・・・e-Spirit

まず、子ども時代はどんなふうに過ごされていましたか。

両親が映画や音楽が好きで、気づくと家でよく流れてました。
だから映像への親しみはごく自然なものだったかもしれません。
自分は映像と全く関係のない大学で、バックパッカーで日本一周したり、 音楽、ファッション、フットサル、本、ギャンブルなど、自分が好きなものにひたすらお金と時間をつぎ込んで楽しんでいた感じですね。

映像を仕事にしたきっかけは何でしたか?

大学3年生のときにテレビカメラマンの方と知り合い、現場をのぞかせてもらったのですが、そこで「映像って、自分の価値観をギュッとまとめて伝えられるんじゃないか」って感じたんです。 それで4年生の時にショートフィルムとか作ってみたりして、やっと映像の道に近づいていきました。あと、漠然とですが人に興味があったので、人の人生に関わるようなこともしたいなと思っていて、就職活動は映像以外の業界も受けました。 それでIT系や人材系の会社、芸能事務所などからも内定を頂いたんですが、映像の力を信じてロボットに入社しました。


当初からディレクター希望でしたか?

最初は制作部に配属になって、3年〜4年ほど働きました。当時、部署を超えて月に一回くらいアイディアを持ち寄るビジネス会議のようなものが行われてまして、その場でiPhoneアプリのプレゼンをしたんです。当時はまだスマホが主流じゃなかったし「アプリ?」みたいな反応もあったんですが当てる自信はありました。何とか企画は通ったのものの、その後が大変。プログラマーを探して、慣れないソースコードを自分もいじって、Appleとのやりとりを英語で四苦八苦しながらやって…。それでどうにか完成した「Sound Trip」を見て、Visa worldwideの方が「うちと一緒にやりましょう」と言ってくださって、ビジネスに結びついたことは少なからず自信になりましたね。
そうしたことも引き金になって、企画演出部に異動になりました。ただ、最初がアプリ開発だったので企画演出部でもアプリ屋さんとかデジタル系の人と思われて……。最初のイメージってどうしても強いから、入ってからも“ビジネス寄りのコンテンツを作る人”でした。

そこからどうしたんですか?

ひたすら「いや、実は違うんです」って言いながら、積極的に色んな仕事に絡んでいきました(笑)。すると本当に突然、初めて映像を演出できるタイミングが来たんです。それがなんと、HONDAのグローバル広告で5分という長尺物でした。しかもいきなりの海外撮影で(笑)。

初演出がビッグプロジェクトですね。

当時25歳くらいで、何が何なのかよくわからないままハリウッドに行ったら、200人くらいスタッフがいて。ただでさえ日本人って幼く見えるから現地でも「キミが監督?キッズじゃないか!」なんてことも言われて…。でもまぁ実際本当に未熟だったので、良い悪いのジャッジがすぐにできない。もう誤摩化すのに精一杯で、クリエイティブの上司に散々助けてもらいました。
自分はその中にいるレベルに達していなかったんですけど、最先端の技術があって、トップクラスのスタッフが揃って…。そうした最高の環境を体験できたことは、その後の演出に対する考え方を大きく変えたと思います。

HONDAなどをきっかけに、その後はCM、ショートフィルム、Web…。本当に幅広く手掛けていますが、どの作品にも清水監督がこれまで培ってきた音楽などのカルチャーがしっかり根付いていて、さらに人に対する思いも伝わってきます。色々なものをプロデュースする中で、こだわりはありますか?

今の自分の仕事は大きく3つあります。
1つはCMやショートムービー、ドラマなど映像の演出業。2つめは映像に限らず、Webやイベントを含む広告プロモーションのクリエイティブディレクション。そして3つめが脚本を書いたり、ドラマの企画など新しいコンテンツを開発する仕事です。
そんな感じなんで未だに周りからは「何やってる人なの?」と思われているみたいです(笑)。自分としてはプロセスや肩書に全然こだわりがないんですよ。世の中にとっていいものが生まれることが大切だと思うので、監督であれプロデューサーであれ企画であれ、見た人も作った人もよかったなって思えるものを作れたなら、僕は別にどんな立ち位置でもいいんじゃないかと思います。

パイオニアとして新しいディレクター像を切り拓いているようにも思います。

これはアメリカで感じたことなのですが、日本とアメリカじゃアシスタントディレクターの立場からして違うんです。向こうのアシスタントディレクターだと「車?ベンツが家に4台あるよ」なんて人が割りと普通にいて、社会的・経済的立ち位置がしっかりしていて、ステータスもある。もちろん映像が産業として成り立っていることが大きいと思うのですが、日本の映像業界全体がもっとそうゆう風に憧れを抱ける業界になっていけたらいいなと思います。

キャスティングに関してはいかがですか?

CMのような短い時間の中で何かを伝えるって、理屈じゃない、感覚に近い部分もすごく大きいので、自分なりの“感覚の物差し”を明確に示せるかどうかが大切なような気がします。
僕としては音楽とキャスティングがうまくいけば60〜70%くらいは完成だと思っているので、本当に重要です。たまに役者さんを通じて、キャスティングディレクターの意志を感じることがあります。それって言葉のないプレゼンみたいな物ですよね。監督としては嬉しい限りです

オーディションの場では、第一印象+演技が大きい要素になるかもしれませんが、清水監督として「ここは見る」っていうものはありますか?

いつも本音を聞きたいって思いますね。だから役とか設定とか取っ払って「人には言えない秘密を1つ教えてください」なんて質問を投げたりします。作られたものではなく、その人の本質的なもの、経験的なものを僕は見たいんです。そうすると、さらけ出す人、隠す人などで人間性がわかったりします。どちらがいいとか悪いではなく、そうした変化球を投じることで懐の深さが見えたりしますね。

最後に、今後のビジョンを教えてください。

以前、NHK アニメワールド「ふしぎのヤッポ島 プキプキとポイ」の脚本を書きました。ある時、社内のプロデューサーが「それ、うちの子どもがいつも楽しんで見てるよ」って教えてくれて。その時、今まで感じたことのないやりがいを感じたのを覚えています。子供って正直じゃないですか(笑)。老若男女が楽しめるものってやっぱりいいな、今後も作っていきたいなと思っています。
また、好きなものが色々あって、それを映像に集約できればというのがこの業界に入ったきっかけだというのは冒頭でお話しましたけど、今はこんな監督がいてもいいんじゃないかと確信を持てるようになってきました。既成概念にとらわれない、新しい監督像を作りたいという気持ちもほんの少しあります。映像以外のことも沢山やってますけど、それが何らかの形で映像にも還元できると僕は思っているので、それが今から楽しみです。

ありがとうございました。



清水健太氏
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キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、清水健太さんです。