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長添雅嗣氏 インタビュー
(略)  ・・・長添雅嗣氏   ・・・e-Spirit

小さい頃の監督はどんな少年でした?

恐竜や動物、ミニ四駆、プラモデル、アニメ…と、少年カルチャーにドハマリしていました。絵を描くことも得意で、それらを模写してみたり、何事にもはまりやすいタイプでした。
高校ではHIPHOPにはまっていました。特にグラフィティに影響を受けたことがきっかけで「イラストレーターになりたいな」なんて美大を志望したんですけど、いざ入学すると自分より個性的な絵を描く人なんて山ほどいるんですよね。
その頃も少年カルチャーはずっと引きずっていたから、じゃあアニメを書こうかなって感じで最初はコマドリで手描きしたのをスキャンしてDVカメラで実写撮って…というのを自己流でやっていました。漠然と映像を作る仕事や監督になりたいなと考えるようになっていました。

卒業後は映像制作会社に入社されています。

2000年頃のニュースステーションのオープニングを見て「自分が作りたいものはこれだ!」と。CGでもアニメでもなかったので、当時見たときはポスターが動いているのかと思ったんです。その後、それがモーショングラフィックスだと知るんですけど、 自分のやりたいものに近くて、インターネットで探して小島淳二さんにたどり着き、すぐにメールしました。すると幸運なことに「作品を見せて」とレスポンスがきて、顔合わせを経てteevee graphicsに入社することになりました。
teevee graphicsは「編集・コンポジットができる人が監督になるべき」という小島さんの考えのもと、スタッフの仕事は撮影準備と編集、CG的な仕上げの部分がメインなんです。エディター、CG、オンラインエディターの仕事に関してはめちゃくちゃ学びましたし、ディテールにこだわる姿勢を叩き込まれました。

ディレクターデビューはいつ頃でしたか?

名刺にディレクターと入ったのが入社4年目くらいで、きっかけはミュージックビデオの演出コンペで案が通ったこと。 現場もほとんど初めての中で、アーティスト、キャスト、そのほかのスタッフを取りまとめてその場で判断を迫られるという状況がまず初体験で、 撮ったはいいけど、これカッコよくなるのか…?みたいな不安になったり。 まあ、やりながらではあったけど、それを繰り返すうちに自分なりの手ごたえみたいなものを感じ、20代のうちに独立を決意しました。


フリーランスを経てN・E・Wに所属されています

独立して2年程一人でやっていたんですけど、当時ELECROTNIKの中根さんご夫婦が「事務所作るから一緒にやろう」と誘っていただいたのがきっかけです。 お互いミュージックビデオを中心にやっていて、競合することも多かったしイベントで名前連ねるときによくお互いの名前を見ていましたし、基本はマネジメントだけでも、たまに仕事を一緒にやったりという幅の広がりもいいなあと思いました。 実際、N・E・Wとしてやるようになってからは、撮影とか照明のスタッフを含めてチームとしてやっていく面白さを感じていますね。

エッジが効いていて、若者に刺さる。ブッ飛んでいるけど、その具合が絶妙、というのが長添さんの作品の印象です。アイディアはどうやって生み出していますか?

その言葉が自分にとっての最上級の褒めことばなので、かなり嬉しいですね。
一例ですが、代理店さんが詰めた企画コンテを渡されるところからスタートなんですけど、それってもう一枚一枚の絵に意味があって、いじる余地がないようなものなんです。 まあ、そこから現実的な予算だとかを考え、映像の表現を詰めて演出プランを出すんですけど、企画コンテからディテールアップしただけのものだと「ああ、普通にまとまったね」となる。 そうではなく、企画コンテからまた違うものになる「演出ジャンプ」を絶対したいって思っているんです。もちろんいいアイディアは使わせてもらうけど、肝になるところは自分で考えたいし、そうじゃないと嫌なんですよね。
自分のスタイルとしては、あまりに企画コンテを基本にして考えすぎると煮詰まってしまうので、いったん企画コンテは置いて、「今自分が作りたい映像って何だ?」というところを考えるんです。で、それを企画コンテにくっつけるようにしている。 これが自然に繋がるようになってからアイディアが浮かぶスピードもぐっと速くなったように思います。

気に入っている作品はありますか?

直近だと、ももいろクローバーZのMV「GOUNN」ですかね。自分がももクロファンだっていうのがデカいですけど(笑)。 アイドルビデオだけどテンション上がるようにしたいなって思って、映像のグルーヴ感を大事にして作りました。 万華鏡の手法はテーマとピッタリだから合うし、オープニングのアニメ感からモーショングラフィックスから、実写から、自分の好きなものを全部詰め込みました。
あとは「Xperia」シリーズ、「Official Timer SEIKO x IAAF World Championships MOSCOW 2013」あたりも気に入っています。
Xpeiaは機能訴求に寄らないということで、委ねられている部分も多く、やりがいもありましたが、その代わりカッコ悪いものは許されない。 SEIKOでは縦のタイムスライスを使い、角度で魅せて躍動感を伝えました。印象深いのはスキーのシーン。 吹雪で真夜中の雪山ロケで、60台くらいカメラ置いて、重機も入って工事さながらでしたね。



ももいろクローバーZのMV「GOUNN」


SEIKO


ディレクターをする上で心がけていることはありますか?

師匠である小島さんの言葉なんですけど、「ディレクターは個人商店」なんです。 だから企画から編集まで全部一人でやれるようにっていうのもあるし、あとは他の監督と同じ品揃えだと、“安いところで買う”とか“安心感ある老舗で買う”とかになっちゃうけど、 ここでしか置いていないもの、要は隙間産業なら唯一のものになれますから。代理店さんやクライアントさんからの要望は全部受け止めて、その上で自分のアイディアを出す。 「アイディアを買ってもらったらそこに対してこだわらせてもらうんで、っていつも伝えています。
あと、ずっと持っている少年カルチャーとかアニメだとかは自分の武器で、現にアニメのオープニングのお仕事などもちょこちょこやり始めているので、 形になってきているのかなと思いますね。

「TOYOTA “SPADE”」でイースピリットがキャスティングのお手伝いをさせていただきましたが、長添監督はキャストへのこだわりがとても強いですよね。

SPADEではモノクロシルエットにするというのがあったから、人間のボディラインや筋肉美だったりが大事になっていましたね。 あとは車内の空間を魅せるために身長の制限もあって、その中で自分がいいなと思うラインに対してはしっかり見たなと思います。
そもそも、ドライな言い方になってしまうかもしれないけど、キャストさんはピクセルだと考えています(笑)もし自分がモデルさんの顔や立ち姿をデザインできたらな〜ってよく思います。 キャストさんは大切にするけども、自分にとっては最終的には16対9の画面の一部です。その一方で僕がつくるのは映像なんで時間軸があってヒトの感情表現も重要な要素です。 見た目だけでなくキャストの立ち姿から出るオーラを大切にします。でないと映像が薄っぺらくなっちゃう。 薄っぺらな奴が出てる映像はぺらっぺらな映像になっちゃうのでそういうキャスティングは絶対したくないです。


「TOYOTA “SPADE”」


最後に今後のビジョンを教えてください。

アニメとか映画とか、別の業種の映像には興味ありますね。先ほどお伝えした、今動いているアニメの仕事も始められたし、 東京駅プロジェクションマッピング「TOKYO STATION VISION」も楽しかったですし。 そういうイレギュラー系のお仕事って、ふつうのCMをいっぱい作っていても声をかけてもらえないと思うんです。 だからこそ自分のやりたいことを明確にもって、どんどん作品に反映させていけたらと考えています。

ありがとうございました。



長添雅嗣氏
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クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、長添雅嗣さんです。