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鈴木孝之 監督 インタビュー
『企画のエッセンスを抜き取って、再構築してみるんですよ。』

(略)  ・・・ 鈴木監督   ・・・e-Spirit

監督は元々制作から入られたんですか?

そうですね、1年弱くらい。

最初からCM制作会社ですか?

最初は番組制作やりたかったんですよ。番組ドラマのディレクターになりたかったんですけど、 受けたら全部落ちちゃって、ひとつだけ受かったのがブラウンというCM制作会社だったんですよね。今はもうなくなってしまったんですけど。

ブラウンに1年くらい?

今思えばとてもメジャーな仕事がきていました。でも、企画がやりたかった自分としては、そんなことはどうでもよかったんで、 企画をやらせてくださいという話をしたら、「今のところ、これ以上の人員は必要ない」という返答だったんで、 じゃあ 「方向転換するなら早いうちだ」と決断して退社、
企画部の募集を探しながらバイトで食いつなぎみたいなことをして、アームズに、ポンと運良く転がり込んだ感じですかね。

アームズに入ったときはディレクターで入られたんですか?

プランナーで。

番組制作はつらそうなイメージありますけど。。。?

そうですね、今思うとなれなかったでしょうね。番組だと30分とか1時間のものが延々と1クールとか1年とか続きますよ。
でもCMは、スパンが短いし、長さも15秒、30秒。それがいっぱいいっぱいって感じです。

でもその短さが逆に難しさだと思うんですけど?

15秒だと450フレームも!ありますからね。充分です。
15秒じゃ足りないとよく聞きますけど、僕は全然平気です。5秒でやれって言われたら5秒でやります。1秒でやれといわれれば1秒で。

5秒はないですよね?

ないです。5秒や3秒とかでやってみたいですよね。アジア人はせっかち(だと僕は思っています、勝手に。アジアの皆さん、ごめんなさい)だから、遺伝子的に向いてる気がします。

監督は、どういう演出がお好きなんですか?

「リアル」が好きです。「リアル」って言うのは生活を切り取ったとかそういう
表面上なことではなくて、その人や、その事が存在しているホントっぽさというような意味合いなんですが。
だからどんな企画でも、そこを考えるようにしています。「今、リアルな方」にもっていきたいです。

実際に一般の人を起用されたことはありますか?

何度か、ありますよ。やっぱりいいですよね。こっちで考えた事通りに演じてもらうと、まあたいていの場合ウソ臭い。 で、そういうのって見ている方にもすぐ見抜かれてしまう時代ですよね。ああ、なんか仕掛けてるとか。そういうことじゃなくて、 仮に何かをあてはめた役にしても、その人のもつ、「あるリアリティ」が重なってくると別のものになるというか、 説得力があると思ったりします。なので、そのあたりを狙っていきたい感じはあるんですね。 某劇団子役系の「おはようございまーーす」みたいなのにはリアリティ感じないんですよ。何もしゃべらないでボーっと立ってる 子の方がよっぽどリアリティ感じますね。 作ったところじゃない端っこをいつも狙いたい、常に「はじ、はじ」。違うところ違うところをなんとか撮ってやろうと思いますね。 それでうまく狙いと引っ掛かっていけば、見てる人への残り方も違うんじゃないかなぁとか。

得意な演出の持って行き方とかありますか?

そうですね・・・、「ゆるませる!」。油断させたところを頂戴したいと。

それは回してないけど回ってたみたいな?

例えばそういうこともありますね。オーソドックスな手だと「カット」を言った後も回してたというような。 そうではないところでも、「小芝居」にならないようにしようとか。

監督は、すごいキャストの人と話してくれますよね。普通にバスの中とかで話してくれたりしますよね。

ああ、そうですね。それはですね、おばちゃんなんですよ!男のおばちゃんなんです。(笑) しゃべり好きなんです。5分我慢できないんですよね。口数の少ない、おとなの重い雰囲気を出そうとしても我慢できないんですよ、 つい、しゃべっちゃうんですよ。

でも出演者としてはうれしいですよね。

実は、相手の人が、何考えているか知りたいだけなんですよね。

キャストは逆に知りたいと思いますけどね、監督がどう思ってるか。

どっちかというと、僕が教えてほしいくらいです。
あとは、よく編集すると、仕上がったものに対して、「ああ、目がチカチカするね、 カットが多いね」とかよく言われます。(笑)
以前はもう詰め込みたくて、こういう風にもできるし、こういう風にもって、いろんなこと入れたくてしょうがなかったんですよ。 それこそ「450フレームの中で全部見せてやれ!」見たいな感じで。えらいがんばってた時があったんですけど、最近そういうのをやめて、 まあ、なるべくシンプルに・・・。

それは、何かきっかけがあったんですか?

いやー、特にきっかけはないですけどねぇ、ほっときゃドンドン詰め込んじゃうんですけどね、今でも時々。(笑)

企画があがってきて、演出コンテを作るときに、どういうところから発想が始まっていくんですか?

当たり前の事だとは思うんですが、一番の元の部分をみて、そこを自分なりに拡大していくってことを考えますかね。
例えば、事細かく流れが書いてあるとすると、それを一回無視して、どれか一個選び なよと言われたときにどれ選ぶか、というようなエッセンスをまず見て、そのエッセ ンスを自分なりに解釈したらこれとどう違うんだというところを考えて、どうすれば 一番そのエッセンスを表現するのにいいか、再構築するって感じですか。 わりと「企画ベースに近いもの」と「鈴木オリジナル」みたいな、皆さんそうかと思 うんですけど、2つ持っていくんですね、時間があるときは。「こう来ますよね」っ て説明しておいて、「こういうこともあるんですよ」って言った時、食いついてきて 「お、おもしろいね」って言ってもらえたら「よし!ラッキー!」そういう作戦にしてます。

実際どっちのほうが取られる確率が高いですか?

オリジナルにより近いほうが取られちゃうんですけどね。(笑) たまに食いついていただいております。 僕は絵が下手なので、絵と完成したもののギャップがすごいらしくて、「いいですねー」 と言われるのは、絵が下手だからもあるみたいなんです。

逆に狙いなわけじゃないですよね?

狙いです!ウソです。ただの下手。逆にそこで「この絵がこうなるとはなぁ」みたいな、変なプラスアルファで喜んでもらってますけど。
たいがい皆さん、上手いですからね。その通りになるんでしょうね、多分みなさん。 僕は書いた通りにならないんで。例えば、描いた絵がワイドなのかなんなのか、よく分かんない(笑)

演出で難しい点はどういうところですか?

遅刻しないこと。(笑)
自分で間に合ってるつもりなんですけど、いろいろあれなんですよね、人生の向かい風が強いとかがあって、遅れてしまうんですよね (この場を借りて、いつもご迷惑をおかけしてすみません、です。)

演出考えるときと、企画から考えるときと発想が変ってきますよね。

まあ、そうですね。演出からだと再構築からスタートですけど、企画だとゼロからなんで。
企画することは好きですね。

すごく限られた時間の中で出さなきゃいけないのが、すごくプレッシャーになりますね。

それはなんでもそうですからね。電車に乗ってて、つり革の手を見ながら考えるみたいな。

そういう時はどうするんですか?何かネタ帳的なものとか持ってるんですか?

前はひたすら覚えてましたけど。(笑)
車の中とかではレコーダー持ってるんですよ。運転しながらレコーダーに、ぶつぶつ。
テープレコーダーが一番便利ですね。

そうなんですか?デジタルのレコーダーだと巻き戻しとかすぐできて楽じゃないですか?

操作が意外と細かいじゃないですか。分かりづらいんですよね。

アナログタイプですか?

そうなんですかねえ。デジモン好きではあるんですけどね。「物欲野郎」と言われてます。

テーブルに向かって考えるみたいなことはあまりしませんか?

そうですね、そしてだんだん時間がなくなってきて机前で追い込み。比較的生活の風景の中のほうが、ポッと浮かぶみたいなことはあるかもしれないですね。 それを夜中にもう一回組み立てるようなことですかね。

演出の方は、どこから発想が出てくるんだろうといつも思っているんです。

基本的には貰ってるんだと思います。その場の空気とか、その場の人たちとか、そういうところから拾ってる感じなんでしょうね。 どこに答えがあるのかを見つかるまではまとめきれなくて。どっちかというと自分の中だけのことよりは、外から拾ってることのほうが多いと思います。
家で散々考えても、いざ外でてみると「あれ?」って。一生懸命考えてる時って、自分でわからないんですよね。 声に出してしゃべってみたら「あれ、すごくつまんないなあー」と思ったりして、途中でしゃべりたくなくなったり(笑)。 全然関係ないところで思いついた方が良かったりするということは、自分の中だけのものじゃ「リアル」じゃないんでしょうね、きっと。

キャスティングに求めるところってどんなところですか?

やっぱり僕は、「リアル」なところですかね、存在が見える人、ですか。面白い人でもいいし、悲しい人でもいいし、なんでもかまわないんですけど。

それはコンテ的に演技が必要だっていう時でもそこは変わらないですか?

変わらないですね。誇張するのは演出でいくらでもできちゃうけど、その人が持ってるものって変えることができないんですよね、演出で。 誇張してやるのはある意味、楽ですよね。でも、あるままの姿ってなかなか、コントロールできないと思うんです。 すごい演出の人はコントロールするんでしょうけどね。少なくとも自分はそこまでできないな、と思ってるので。 「リアル」をお願いします!!ひとつ。

狙いでそういうオーダーがあればもちろんやるんですが、オーディションであまり 「リアル」っていうことを考えないですね・・・。

でもオーディションで、「リアル加減」を見るために、コンテとは違うことやってもらったりすることは、僕はわりと多いですね。 「今日何食べたんですか?」とか、 わりとそういうことをやります。 鮮度の良さが一番説得力あると思うので、あまり見てほしくないんですよね、コンテとか。 オーディション用に、コンテを嘘かいてやろうかと思って、今度(笑)

当社にはどんな印象をお持ちですか?

イー・スピリットさんは、独自の視点があるキャスティング会社さんですよね。

何か新しいことしたいな、しなきゃいけないなと思ってます。その流れがまずひとつ「素人キャスティング」。

おもしろいですね・・・、毎日探してるんですか?

そういう企画が出たときに基本は動きますね。

怖い人とかいないですか?

比較的いないですね。嫌なこと言われたりとかはたまにありますね。キャッチと間違えられてあしらわれるって言うのはしょっちゅうですけど・・・。
でもみんな結構面白がってくれたりしますよ。はじめは心配して、断られたりするんですけど、うちのホームページを見て、改めて電話かけてきてくれたりとかもありますね。

あのホームページはインパクトありますよね。ちょっと違いますよね。考え方がちゃんと分かる。 「こんなことをしました、こうでした、終わり!!」ではないじゃないですか。 全国行脚(ホームページ上の自主企画)、沖縄の次はどこ行くんですか?

鈴木さん、北海道とか企画ないですか?

北海道いいですねー。行脚で。北と南で。あと佐渡島とか、普段行かない場所も。

お休みは不規則だと思うんですけど、どうしてるんですか?

休みのときはひたすら家事・育児。子供が生まれて、生活が激変しましたから、一緒にバス乗ったり、そんなことしてます。「江ノ電だよー」とか言って。(笑) 自分がそんなことすんだなーと思って自分に感心したりして。生活ってリアルだーと思っちゃいますよね。 子供が生まれてそういうところが自分の中で変ったかもしれないですね。

演出に影響してたりしますか?

わからないです。なんかあるかもしれないですねー。
今までは子供とか親子とか、歩いてて、「風景」として見てるわけなんですよ。 でも自分に子供ができてからは同じ目線で見るようになりましたね、やっぱり。
「あ〜、あの子寝てるなー」とか「どうしたんだろ」とか。視点が感情移入しちゃうんですよ。 いいのか悪いのか疑問ですけどね。だから、少し冷静さを欠いてる感じはあるかもしれない。

おうち帰りたい感じですか?

はい!子供がいなかったときも別に帰りたくないわけじゃないんですよ。(笑) ハガキで子供の写真とか送ったりしますし。自分はやらないと思ってたんですけど、やっちゃうもんですねー。

サーフィンはどれくらい行かれるんですか?

波があれば、いつでも。とはいえ週2回くらいですかね。もう10年か10年ちょいくらいですか。 仕事で制作会社へ行ったとき、「やらない?やらない?」って、しつこく声かけてます。必ず1人はのってくれるんですよね。

好きな食べ物を聞いておこうかなと思います。

オーディションで聞かれるようなことを・・・。(笑)

うちのホームページで、鈴木さんのインタビューを見てくださった制作会社の方な どが、鈴木監督を今度お願いしたいなというときのネタのために。

好きな食べ物はゆで卵です。ゆで卵が好きなんです。大好きなんです。1日2個とかいうじゃないですか、食べ過ぎるとアレルギーとか。 そういうのがなければ1日10個くらい楽勝!

現場にゆで卵と塩があると。

もう最高ですね(笑)
バナナと双璧をなしてます。世代的にバナナの世代なもんで。「いっぱい食べると、 コレラになるよ(なぜ?)」 と子供の時言われたりして抑圧されたせいか今バクバク食べるんですよ。あれ?バナナの方が好きか?

鈴木さんの撮影現場の弁当すごいじゃないですか、バナナとゆで卵で。制作会社さん大喜び!みたいな。

じゃあ、せめて素材の良いやつを。有機栽培とか。ウソです、何でも食べます。

お酒のほうは?

たしなむ程度に、浴びる程度に。(笑)

何を飲まれるんですか?

ビール好きですね。ずーっと飲んでます。

僕もビール党です。ビール、焼酎、最後ビールみたいな。

あ、わかる。それで酔いが・・・。ダメージ大きいですけど。

今後のスタンス、やってみたい演出はありますか?

広告の嫌なニオイがしないCMを作りたいと思ってます。 トコトン「これでもか」くらい匂うならいいんですけど。
微妙な作為や嫌なニオイを残さない、そういうところを目指したいですかね。

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