キャスティング会社イー・スピリットがお送りするクリエーターズインタビュートップページへ戻る
サトー克也氏 インタビュー
(略)  ・・・サトー克也氏   ・・・e-Spirit

アイデアをためるための工夫やアンテナをいろいろと持っていらっしゃると思いますが、どういうアンテナの張り方・情報収集の仕方をしていらっしゃるのか、というところをお聞きしたいと思います。

 アンテナの張り方?!淀川長治さんが昔言っていた良い言葉があって、『映画監督の基準は何か?』と淀川さんが聞かれた時に、 『3分間で目の前にあるコーヒーで脚本の書ける人。それが映画監督の基準だ』と淀川長治さんは言った。

 それはどういうことかと言うと、仮に目の前にコーヒーという題材を与えられようが、 ハチミツヨーグルトという題材を与えられようが、哲学さえ持っていれば、 それで脚本を書けるはずだというふうに淀川さんは監督を定義した。

  僕らいわゆる広告クリエイターも、それに近いところがあっていいと思っています。 自分の哲学、基本的には『生きるということの哲学』、『人生ということに対する哲学』、 そういったものをしっかり持っていることがクリエイターとして僕は必要であり、 その哲学をお得意さんが買っていくのだと思っています。

  僕は、携わってくれる人とか、CMを見てくれる人とか、ポスターを見てくれる人とか、 消費者に対して『生きることへの喜び』や『勇気』や『元気』をあたえてゆきたい。 もっと楽しく生きたり、人生を謳歌するために、どんなメッセージを送れるかということを考えています。 それが今の僕の哲学になっています。

  生きていても80年か90年しか生きられないわけで、そんな短い人生だったら、やっぱり楽しんで、 笑顔でこの人生を終えてもらいたいという僕の思いがあって、そのことがすぐ企画に反映されています。 「情報収集をする」というよりは、その哲学をどう磨いていくか、どう純度を高めていくかを真剣に考えている。 すると自然とネタは寄ってくる。本屋に行っていい資料を探そうじゃなくて、いい資料が寄ってくる状況になるというか、 たまたま入った本屋さんに自分の参考になる本がフッと目につくとか。 まぁ波動という言葉を使う人もいるけど、僕がある波動を発していて、その波動に見合ったものが磁石のように引きつけてくるという感じかな。 雑談している中にヒントがもうあったり。だから情報収集には苦労はしてないですね。

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広告に対してサトーさんはどのようにとらえていますか?

 『人の人生にいかに本質的に関われるか』というのが、広告において大事だなと思っています。 『広告に気づきがあることが大事』。インパクトではなくてね。 「インパクト!インパクト!」って散々、言われてきたけど、これは僕特有の考え方だけど、 広告には「気づき」があることが必要。気づきがインパクトであり、心に響いていく。 心に響いたものは、いつまでも残っている。それは広告としてはありがたいことなんだよね。 テプコで言うならば、『身近な小さいところから幸せになれるんだよ』というメッセージが実は裏にあって、 やっぱり生きることへの賛歌というか、応援するメッセージの強さ。『そうだよな。ちょっとしたことで幸せになれるよな。』と。

  もし気づければそれがインパクトになっていって、ブランドのためにもなっていく。 気づきのある広告作りというのが大事だなと思っています。

  僕の作るCMを見ると一貫して何かちょっと変な感覚があるのは、僕の哲学の違いだと思うんだよね。 広告というメディアは映画や文学のように、相手が選ぶのではなくて、相手の領域に土足で入っていく。 それには、やはり礼儀が必要だと思っていて、土足で入っていく以上、 相手にプラスになるエネルギーを提供していることが礼儀だと思っています。 プラスのエネルギーを提供してないと商品を買おうなんて気にならないだろうし、この企業、ムカつくで終わってしまうと思う。 そこの礼儀とかスタンスというのかな、そこが根本にあって、さっき言った哲学にも繋がっているのだと思います。

  だからインパクトでドンと騒げばいいというような20世紀的な、バブル的な広告手法はもう一回終わっていると僕は思う。 僕自身もそうやって作っている時はありました。

サトーさんの物事の捉え方や表現がポジティブで、プラスの部分を大事にしていると感じたのですが、 逆にマイナス的な表現はしないように心掛けているのか、それとも、手法としてないものなのか、というのをお聞きしたいです。

 人に恐怖感を与えて、『こんなことになっちゃうと大変だから、こうしておかないといけないよ』というのは、 人を脅すということ。人の恐怖感を増長させてモノを買わせようとすると、結局、その企業がマイナスのイメージになってくると思う。

  昔はそれでも良かった。1970年、1980年、バブルの頃とかは割とそうだけど、 ただ自分から発したものは自分に返ってくるのが自然の原則だと僕は思っている。
 企業が恐れを発したら、絶対に自分に恐れが返ってくるような状況を惹きつけると思う。 だから基本的にポジティブな波動を出し続けてないと駄目。これは人の生き方もそう。

  例えば人にはネガティブな部分もあれば、ポジティブな部分もある。何か1個、失敗したとしても、 それは1個の失敗であって、10個のうちの残り9個はいいことをいっぱいしているのであれば、 9個のところを褒めてあげたほうが、1個の失敗が消える。これを『長所伸展法』と言うんだけど、 短所と長所をだいたい人間は持っているわけであって、短所を指摘すると、そこばっかり気にすることによって直らない。

  だからマスコミのスタンスの問題だけど、多くは「ほーら、こんなにひどいだろ、今」と脅す方向の論調が多いけれど、 これは僕、『旧コミュニケーション』だと思う。今の時代、ネガティブ表現はとらないほうがいい。

  また禁止はネガティブとは違う。ちょっと言霊になってくるけど、例えばあるメーカーが、『買うなよ』という広告を出したとする。 人間というのは、禁止されればされる程、興味を持つもの。だから売れる。『18歳未満禁止』と言うからやりたがる人がいる。 禁止されると逆にやりたくなる。禁止はエネルギーだから強くなる。

  だから言葉や映像とかの『力学』をクリエイターは勉強したほうがいいと思います。何を発すると自分に返ってくるかとか、 何が企業に返ってくるかとか、そこのコンサルティングがちゃんとできることが必要。 それが、これからの広告マンの資格というか、僕がもし企業の人間だったら、そこまで勉強している人間とか、 分かっている人間を自分の会社にコンサルティングとして受け入れると思います。

いつごろからそういう考え方をされるようになったのですか?

 ここ10年ぐらいかな。20代の頃『出前一丁』というCMがヒットした時に、何か一回区切りがあって、 ただ単に笑えるからとか以外に『何か目に見えない力の働き方があるな』ということに気付いた。 特別、霊感者でも霊能者でもないのだけど、どうも世の中には僕が今まで信じていたもの以外の現実があるのだなとか気付いて、 「待てよ。心の中の問題はもっとディープなんじゃないか?広告って、ただ単に笑わせればいいというものじゃないぞ」と。

具体的にいうと、どういうところで力学や言葉の力が働いてくるのですか?

 例えば先日の現場で言えば、僕は演出家でもありCDでもあった。そのリーダーがガミガミ文句を言ってたり、 ネガティブな言葉を発すると、現場がギスギスする。それよりも、リーダーになる人間が周りを盛り上げていって、 周りの気持ちをあげていくというのが必要。現場の『気』をあげていくことをしたほうが、出演者もいい気分の中で表現できる。 それにフィルムは絶対、その場の雰囲気が映るからね。この現場、辛そうだなとか見える。波動で感じる。 映像の中に、気が映っているというのかな。

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『リアリティ』という表現、演出をどのようにとらえていますか?

 50年前と全然違っていて、テレビの前の多くの人が、もう広告の裏側とかメディアの裏側を知っている。 これCGでしょとか。そうすると『広告は虚構』を前提で観ているので、『これはあなたのことですよ』と思ってもらうためには、 ある種のリアリティがないと見てくれない。

  マクセルみたいにカメラの前に子供達を立たせて、『将来への自分に向けてメッセージを言ってくれ』という演出はリアルだった。 カメラがあるという時点で嘘になるから、カメラがあるという前提を嘘じゃなくするには、 カメラに向かって言ってもらうという前提をよしとした広告を作らない限り、演技させた途端、嘘だと思われる。 その前提を作ろうと思って、カメラに向かって言ってもらった。『カメラの向こうに未来の自分がいる』ということを 前提に作ったことによって、見る側もこれは本当だなと思うわけ。また絵空事にするのだったら、上質な絵空事。 完全に嘘だけどエンターテイメントになっているのが必要。だからやるのであれば、 「完全な絵空事をやっているのだよ、僕ら!面白いことをやっているのだよ!」という前提で見せる。究極のエンターテイメントで見せるか、 究極のリアリティで見せるか、どっちかにつかないと広告に力がつかないように思います。

一般消費者を起用することに関してどのように考えていますか?

 多分、タレントさんであろうが女優さんであろうが素人であろうが、この商品の、 このコンテを表現する為に必要な人だったら、僕はボーダレスでいいと思っている。 その商品の、そのコンテで『タニマチ的なもの』ではなくて、『表現者』として出演してもらうから、 そのコンテを表現する為に素人がよければ素人でもいいし、女優さんが良ければ女優さんでいいと思います。

今後のビジョンをお聞かせください。

 たった80年、90年の人生。どんなに生きたって100歳ぐらいしか生きられない。歴史の中で見れば、ほんのわずかな人生だから、 『みんな自分らしく、イキイキと輝いて生きてほしい』というのが僕の哲学。

  表現媒体がアニメーションになろうが絵本になろうが、映画になろうが小説になろうが、それは伝えられるわけであって、 割とそういう幅広いメディアもシェアに入れて、『表現者』として生きていこうかなと思っています。 ただ広告というのは、まだまだ世の中に必要とされるものなので、やっぱり自分が育った広告というところをベースに生きていくという感じかな。 

  見てくれる人(消費者)に生きるチカラ、ワクワクする気持ち、やる気、勇気、笑顔、元気、 そして『気づき』をあたえられる広告が増えてくれば、広告はもっと気持ちよくなれて、飛ばされないモノになってゆくと思います。

サトー克也氏
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クリエーターズインタビュー

キャスティングのイースピリットがお送りする「クリエーターズインタビュー」広告業界で活躍するクリエーターの貴重なインタビューを掲載。今回は、サトー克也さんです。