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竹内幹氏 インタビュー
(略)  ・・・竹内幹氏   ・・・e-Spirit

よろしくお願いします。まず監督が演出家という職業を選ばれたきっかけ、もしくは過程をお聞きしたいと思います。

これは話が古くなるんですけど高校の時、文化祭で芝居をやろうということになった。細かい経緯忘れましたが、私がまとめることになり、1年生の時は赤ずきんちゃんをドタバタ劇にして、それを演出して、クラス全員にやらせたというのがあったんです。2年の時に、ある原作があって、 それは原作では結構かわいそうな話なんだけど、またギャグ版に仕立て上げたりして、クラスみんなで芝居をやり、私は演出的なことを担当しました。その時に『形になっていない何かを作るのが面白い』と感じた。それが原点だろうと思っています。

3年時の文化祭は、喫茶店になったので演劇等の演出はしなかったのですが、隣のクラスの奴らが8ミリフィルムで映画を作っていた。 「太陽にほえろ」のパロディをクラスみんなで作った。映画はもともと好きでしたが、 それを見た時に初めて、「映像っていいな」と思いました。そんな思いをいただきつつ大学受験の時に、 映像制作の仕事に就こうかなと。それがきっかけと言えばきっかけですかね。

大学1年の時は8ミリカメラで記録映画を撮ったりとか、2年からは短編映画みたいなのを作った。 3年生の時は短編映画を2本作った。そのうちの一つの内容は「正体不明の箱が届けられて、開けたらおしまい」 みたいなそんな話で、主人公はだんだん精神衰弱というか消耗していくような話でした。ギャグの要素が強いのですけどね。

ギャグなんですか?すごくスリラーな印象を受けるのですが。

いえ全編ギャグなんです。卒業制作では、確か太平洋戦争中の兵隊が爆風で現代にワープしてくる話を作ったんですよね。 その時に生き別れになった戦友が、今はこの世の中で武器の商人をやっているみたいな。 そいつをいさめにいくような。そんなようなギャグ仕立てのものを作って。そんな感じが演出家になりたいなっていう。 映画というか長編の本編を作りたかったのがもともとなんですよ。

コマーシャル業界に入ってディレクターになって、演出の勉強をしていって、 ゆくゆく映画の監督っていうのが本来の目的だったのですが。CMディレクターになって、フリーになって今日に至ります。


フリーになられたときは、CMディレクターとしてですか?

14年前フリーになった当時は企画・プランニングでフリーになりました。最初の年は96本の企画をこなしたという記録があります。

1年で100本近くってすごい数ですよね。

かなりつらかったですよ、最初のほうは。ただそれだけ企画の仕事がきて、企画やっているうちに、 『演出もそのままやんないか』って話がきた。うまく演出の仕事が増えていったって経緯があります。

だから企画的な観点で考えて、もらった企画の『どこをどのように膨らますか』とか、そういったことが好きですかね。 自主制作の映画とかと違って、CMは多くの意向や流れを組んだオーダーがあって作られる。 だからお題を『一口でどう言い換えるかって』ところから始めていき、結構トコトン考え抜きます。 最近は企画が決まって演出するケースが多いのでその場合は、どこをどうするかっていう時に、面白くするっていう方向で考えます。

監督の面白いっていうのは、具体的に言うとどういうことですか?

やっぱり共感性ですかね。『見たこともないものの面白さ』というよりは、自分の「あれっ、これ見たことあるぞ」 とか「よくあるよねー、こういうこと」っていうリアルさを重視しています。日常にあるちょっとした面白いことですね。

最近見たCMでは、焼酎のCMで、『ほんとのことは一度しか言わない』というコピーがあった。 あれがすごく面白いなと思いましたけどね。確かに2回言うとなんかね。取り繕っている感じがあるので、 そこをうまいことを発見したなーと思いました。やっぱりそういうところですよね。見たこともないものは、 視聴者には共感をもたれづらい。

あるビールのCMの場合でいうと元力士のタレントさんのところにアナウンサーが唐突に来るって設定だったのですが、 垣根の外で、最初にちょっとだけお互い会釈し合うシーンがある。 外から入って来るからには、ギャグやりながらも一回、軽く会釈するってことにこだわりましたね。 馬鹿やっているんだけど、一応人間としては丁寧な対応をしているというか礼儀をわきまえているというか、 そういう人達を表現したほうが余計、気付いた人は面白いかなって。もちろん気付かないかもしれないけどね。


監督にとって企画とはなんですか?

うーん。大変だけどやりがいのあること。なんにもないところから作るということは大変なんですよね。 困難な方が好きなんです。演出だってもちろん大変です。ただ今でも企画をやることはあるんですけど、 やっぱり『生みの苦しみ』みたいなのが企画を作るなかにはありますね。 こないだも一つ、自分の企画が競合で勝って進めていったんですけど、あまりにも長かったんで、 他の人に演出をお願いしました。企画だけで演出は他の人にやってもらうというケースもよくありますね。 それぐらい大変なことなんですね。

企画の内容で判断することはしません。その企画になるには、それなりの理由があるから。 簡単にどうこうって話しじゃないですから。結構、ダメージを受けて通ってくる企画が多い。
いろんな意見が入ってきて、決まったやつがどんどん送られてくるというような企画もきます。 それをどのように『心』を入れるかとか。薬を塗り直すかとか、そういう修復作業は得意かもしれないですね。

なんかそこに監督の愛を感じますね。

爆笑

なんか経てきた道を見て、『企画さんたち頑張ったね』って監督がはげましているみたいな。

まあ事情があるんですよね。よく「企画コンテを送るので見てください」っていわれますけど、事前にはあまり見ない。 『企画でやる』か『やらない』かを決めるわけじゃないからね。



竹内幹監督作品集ダウンロード(PDF形式 3.07MB)竹内幹氏
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